自分が何者かわからなかった――独立から3年、個を確立した西内まりやの「気張りすぎない」生き方
「普通」の暮らしをして、自分という人間を知れた
独立後の約4カ月間、海外で完全休暇を取った。復帰してからもニューヨーク、パリ、モロッコなどでファッションや広告の仕事を積み重ねながら、マイペースを保った。すると、少しずつ心身の健康を取り戻していった。 「カフェの店員さんと何げない会話をしたり、家事をしたりして、私にとっては非日常となっていた当たり前の日常を過ごしました。一日のスケジュールを自分で決められる。あまりに新鮮でした。普通の暮らしをして、自分という人間を知れた。何が好きで、どんな生活を送りたいのか。根本的なことから見つめ直して、自分の良いところも悪いところもよくわかったんですよね。ダサい部分もあるし、逆に自分にしかない強みもある。その全てを理解したとき、やっと自分を受け入れて、愛せたんですよ。私は私でいいんだって。それが、この3年間だったと思います」
節制に節制を重ねたモデル時代では考えられない行動にも出た。 「『食べたいだけ食べるぞ!』って決めて、しっかり太りました(笑)。でも、夜中にお菓子やラーメンを口に入れると、やっぱり体調が悪くなる。暴飲暴食はいけないと身をもって実感できた。そんな経験がうれしかったし、一つひとつの出来事全てが新しいんです」
『全裸監督2』で勝ち取ったサヤカ役
人生には、開けなければならない扉がある。西内にとって、独立は心を整えるために必要な手段だったのだ。そして、今年6月配信のNetflix『全裸監督2』で女優復帰を果たした。 「独立して映画やドラマをほとんど見ていなかった一昨年、いろんな人から『全裸監督』を勧められ、視聴しました。アダルト業界という題材はもちろん、ワンシーンの作り込み方など作品全体から覚悟を感じました」
キャスティング会社から誘われ、2020年1月に高級クラブのホステスを務めるサヤカ役のオーディションに参加。西内はこれまでも女優としての実績があり、フジテレビの月9ドラマにも主演している。「いまさらオーディション……」という気持ちにならなかったか。 「むしろ、うれしかったです。一から挑戦できる環境で、自分で全ての責任を背負って戦ってみたかった。オーディションって、すごくフェアですよね。やっぱり、(知名度や人気優先ではなく)その役にハマる人を選ぶほうがいい。サヤカのイメージに合うんじゃないかと思った衣装を3、4着持参して、武正晴総監督に選んでもらい演技をしました。その後に控室で1時間待って、総監督に作品への思いもたっぷり語らせてもらいました」