<映画評>狙撃手の光と影、戦争がもたらす悲劇 ─ イーストウッド監督最新作『アメリカン・スナイパー』
クリント・イーストウッド監督の最新作の映画『アメリカン・スナイパー』が、アメリカで空前のヒットを飛ばしている。 日本では2月21日から公開される同作は、アメリカ海軍のエリート部隊「ネイビー・シールズ」に属し、イラク戦線で活躍した伝説の狙撃手のクリス・カイルの回顧録『ネイビー・シールズ 最強の狙撃手』を、巨匠クリント・イーストウッド監督が映画化。主演のブラッドリー・クーパーがカイルを演じている。 アメリカでは1月16日に封切られると、公開から約2週間で2億ドル(約240億円)の興行収入を記録し、98年公開の『プライベート・ライアン』を抜いて戦争映画史上最高の興行収入を樹立。すでに興行収入は3億1000万ドル(約379億円)を突破しており、「第87回アカデミー賞」において「作品賞」や「主演男優賞」など6部門にノミネートされるなど話題になっている。 イーストウッド監督といえば、俳優としても映画『荒野の用心棒』や『夕陽のガンマン』、『ダーティハリー』シリーズをはじめ輝かしい実績を誇り、監督としても『許されざる者』や『マディソン郡の橋』、『ミリオンダラー・ベイビー』などを手掛けた巨匠。『父親たちの星条旗』や『硫黄島からの手紙』などの戦争映画も広く知られている。 一方、主演のクーパーも09年公開の『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』でブレイクし、11年には『ピープル』誌で「最もセクシーな男性」に選ばれ、12年公開の『世界にひとつのプレイブック』、13年公開の『アメリカン・ハッスル』、そして今年公開された今作と、3年連続で「アカデミー賞」にノミネートされるなど、今最も注目を集めている人気俳優の一人だ。 ハリウッドの大物同士の共演というだけでも話題性は十分だが、今作の魅力は“イーストウッド監督による戦争映画の最新作”や“大物同士の共演”などといった安易な言葉だけでは決して表現しきれない。