香川県で「どん兵衛」選択にドン引き…ほぼチェーン店で食べる相方の異常な食生活を銀シャリ橋本が語る
人気お笑いコンビ・銀シャリ橋本直さんが文芸誌「波」で綴るのは、どうしてもツッコまずにはいられない、そんな“ツッコミ中毒”な日々。第15回のテーマは「鰻という男」です。相方・鰻和弘さんの4コマ漫画もあわせてお楽しみください *** 僕の相方の鰻和弘はチャレンジをしない男だ。安定を求める。アイスを頼む時もバニラ一択。ずんだもちアイスや、とちおとめアイス、はたまた醤油アイスなど、ご当地アイスには目もくれない。 アイスを2種類同時に頼める「ダブル」なんて、もちろん注文しているのを見たことがない。バニラのみの一択。単勝一点買い。潔さにもはや惚れ惚れする。 僕はそんな相方とは真逆でご当地のものを必ず食べるタイプ。失敗することも、もちろんある。ただ、せっかくならそこでしか食べられないもの、その土地でしか食べられないものをチョイスしたい。皆さんはどうですか? バニラ一択の男・鰻は、ご飯についても抜群の潔さを発揮する。東京の劇場「ルミネtheよしもと」の出番の合間のお昼ご飯は決まって、カレーハウスCoCo壱番屋のチーズカレーにトッピングで半熟卵2個。笑えるくらい、毎回これだ。ちなみに半熟卵1個はそのまま口に入れる。大蛇みたいに丸々口に入れるのだ。理由はわからない。鰻の祖先は蛇だったか? 大阪の「なんばグランド花月」の出番の合間のお昼ご飯はといえば、つけ麺か牛丼か、カレーハウスCoCo壱番屋のチーズカレー、トッピングに半熟卵2個。同じ文言で字数を稼ぐみたいになってしまい申し訳ないが、本当に基本この3択なのだ。 どこまでも冒険しない。新しく美味しいお店ができたと楽屋で話題になっても一切耳を傾けない。我関せずといった具合。鉄の意志。どこまでもこの3本柱でいく覚悟は、相方ながら見上げたものだ。プロ野球の先発ピッチャーなら、この3人だけのローテーションでいったら確実に酷使されすぎて潰れるだろう。 そんな3択の男も、一時はつけ麺にハマりすぎてお昼は毎日つけ麺一択、つけ麺だけ食べている時期があった。 出番の合間、時間に余裕があるのに走っている鰻を見かけたことがある。なぜ走っていたのか、あとで尋ねると、「え!? 俺走ってた? ほな、つけ麺食べたすぎて無意識で走ってもうてたかも」との返事だった。 自覚ないんかい、怖すぎるやろ! つけ麺に取り憑かれてるやん。つけ麺やのに入り浸ったら、麺伸びてまうで。 ちなみに鰻は、つけ麺屋さんで絶対に「つけ汁濃いめで」と注文する。あまりにも常連になり過ぎて、食券を出しただけで店員さんの方から「つけ汁濃いめですね?」と言われる時もあるくらいだ。 ある時「つけ汁濃いめで」と当たり前のように注文したら、「え? なんですか? うちそんなんやってません」と断られたことがあるらしい。楽屋で「ちょっと、せつな恥ずかしいわ」というオリジナルの形容詞を放った鰻の顔は、照れながらもええ顔をしていた。 牛丼も大好きで、本当によく食べている。東京で初めて吉野家に行った時、「やっぱ六本木の吉牛は違うわ~」と満面の笑みで咀嚼する姿は今でも忘れられない。 なんなら僕は、鰻がお昼に食べたものを当てられる。その日の仕事の詰まり具合、合間のアンケート等の作業や、取材が入っているか否か、一日に6回舞台の出番がある中で、どの出番の合間に食べに行くかも全て考慮した上で店の立地や距離を計算すれば、だいたい何を食べたか叩き出せるのだ。選択肢はいつだって「Aつけ麺 B牛丼 Cカレー Dその他」で、みのもんたさんに「ファイナルアンサー?」と問われても即答で「ファイナルアンサー!」と返せる自信がある。「鰻昼飯クイズミリオネア」で僕は、すぐに賞金1000万円を獲得できるだろう。 一方僕はというと、劇場の合間は新しいお店を開拓すべく、せっせと散歩している。1時間くらい歩くのも全く苦ではない。美味しいお店を新しく見つけた時の感動はとてつもないものがある。もちろん鰻にはこの感動はわかってもらえない。だが、別に寂しくはない。