ネットの匿名性は保証されるのか? 「2ちゃんねる」個人情報流出事件
ネットの匿名性は保証されるのか?
しかし、ここでもう一度考えてみてください。仮に2ちゃんねるが完全記名性の掲示板であった場合、もしくはユーザーが純粋な情報交換を楽しんでいる人々ばかりで成り立っていた場合、今回の事件は違った局面を迎えていたのではないでしょうか。確かに、クレジットカード情報や住所などまで流出してしまうこと事態は大問題で、運営側にも大きな過失があります。ただ、現在波紋を広げている「匿名だから誹謗中傷を含め好き勝手に書いてしまった」類の失敗にはつながらなかったはずです。 もちろん、この場で“性善説・性悪説”の議論をするつもりはありませんし、匿名性だからこそ2ちゃんねるがここまで巨大化したのも事実です。人間であれば、心に潜む闇の部分が顔を出すこともあるでしょう。どちらかといえば、ここで再確認したいのは“インターネット上に完全なる匿名性は存在するのか”という点です。 ユーザーがインターネット上のサービスを利用する際には、必ずIPアドレスという痕跡が残ります。しかし、クラッキングや掲示板に対する殺人予告の投稿、違法薬物の売買など、犯罪もしくはそれに類する行為をしない限り、プロバイダをはじめ関係機関からの情報開示が行われることはありません。実際、匿名掲示板に殺人予告を書き込んだ犯人が逮捕されていることからも分かる通り、情報開示の必要性さえあれば、たとえプロキシサーバなどを介していても技術的には個人を特定できます。つまり、非公開の情報が蓄積されている状態を、多くのユーザーが“匿名”と思い込んでいるだけなのです。 もちろん前述の通り、通常はこうした情報が表に出ることはありません。しかし、今回のように不正アクセスを受けて表面化する可能性は十分に考えられます。そんな状況下で、果たして今まで「匿名だからなにを書き込んでも構わない」と思い込んでいた人々が、同じ行動をとれるでしょうか。自分が行った投稿の特定を恐れ、後悔しているくらいですから、知っていれば最初から書き込んでいなかったと判断するのが妥当でしょう。 今回の情報流出は、個人によって異なる“インターネットにおける匿名性”の意識に一石を投じた事件といえます。少なからず危機感を覚えた方は、そもそもインターネットにおける匿名性とはなにか、そして有事の際でも後悔しない利用方法などを、もう一度見直す必要があるかもしれません。