2024年は「 ロイヤルティ プログラム」活況の年に:顧客獲得コスト上昇とCookie廃止に直面したブランド
2019年末、ケイリン・マーコット氏はパズル会社ジギー(Jiggy)を設立するとすぐに、リピート購入を促して顧客にリワードを提供するロイヤルティプログラムを開始した。無料アカウントを作成したユーザーは、支払い額1ドル(約150円)ごとにポイントを獲得し、そのポイントを使って割引を受けることができる。一方、マーコット氏のほうにも、インスピレーションやフィードバックを得るのに役立つ顧客グループを集められるというメリットがある。 マーコット氏は「たとえば、ジギーに何を求めているか、どんなふうにパズルを楽しんでいるかなどについて、電話で話した」と語った。 2022年には、月に1回、または四半期に1回、定期的にパズルが届けられる有料サブスクリプションサービスのパズルクラブをローンチした。マーコット氏は、ロイヤルティ会員の行動傾向と、のちに交わした会話から、このプログラムの基礎が生まれたとしている。 「ロイヤルティ会員は利益をもたらす貴重な存在であり、フォーカスグループの役目を果たす」と同氏は言う。「データからできる限りのインサイト(洞察)を集め、そのあと、ロイヤルティ会員との会話を通じて得られた定性的なリアルタイムのフィードバックを分析して、さまざまなプログラムや製品拡張を開発してきた」。
ロイヤルティプログラムの成長点が見られる年に
顧客は割引や送料無料を期待してロイヤルティプログラムに群がるが、小売業者やブランドも、そこで得たファーストパーティデータを顧客エクスペリエンスの向上や成長戦略の調整に役立てることができる。 コンサルティング会社のデロイト(Deloitte)は2024年の小売業界の見通しで、小売業経営者がもっとも多く挙げていた成長機会がロイヤルティプログラムの強化であることを明らかにした。これは、オンライン広告の初期からCAC(顧客獲得コスト)が上昇したことを考えれば、驚くべきことではない。広く引用されているソーシャルコマース企業のシンプリシティDX(SimplicityDX)の2022年の調査によると、平均的な小売業者のCACはこの8年間で222%増大している。しかし、顧客獲得だけでなく、ブランドはロイヤルティ会員をミニフォーカスグループとして利用でき、顧客をより深く理解するために活用することもできる。 市場調査会社フォレスター(Forrester)のバイスプレジデント兼主席アナリストのブレンダン・ウィッチャー氏は、企業はロイヤルティ情報を活用してパーソナライズされた体験を作り出すのが賢明だと語る。「ロイヤルティプログラムとそこから得られるデータが、顧客のプロフィールを調べる絶好の機会であると理解する必要がある。そして、顧客が本当は何に関心があるかを明らかにして、ブランドが発信しようとしていることを適切な対象に正確に向ける必要がある」。 ロイヤルティプログラムプロバイダーのハング(Hang)の創業者兼CEOのマット・スモーリン氏は、顧客獲得コストの上昇とCookieの廃止を考慮すると、今年はロイヤルティプログラムにとって大きな成長点が見られる年になるだろうと述べている。この1年のあいだに、サラダチェーンのスイートグリーン(Sweetgreen)やアパレル企業のハンナアンダーソン(Hanna Andersson)などのブランドが新たなプログラムをローンチした。オーディオメーカーのソノス(Sonos)は、2024年後半のローンチを目指して準備を進めている。 「CACの増大をどのように相殺するか考える必要がある。最善の方法は、顧客により多くの価値を見出すことで、ロイヤルティはそれを実現するひとつの手段だ」とスモーリン氏は述べている。「サードパーティCookieが廃止されれば、ブランドはこれまで以上にファーストパーティデータを必要とすることになる」。