稲盛和夫が教える「平凡なのに成功する人」に共通しているシンプルな事実
その究極にあるのが純粋な善き思い・利他の心・無償の愛と呼ばれるものです。別な表現にすれば、稲盛さんの人生哲学でもある「世のため人のために尽くす」や、座右の銘でもある「敬天愛人」という言葉で表されるものです。 しかし、問題なのは、「考え方」にはマイナス100点からプラス100点まであると表現されているように、幅が広くしかも変わりやすいことです。実際に、正しい考え方を知っていてもそれを常に実践するのは難しいものです。 私自身もそうですが、ちょっと油断すると心の中は妄想・邪心のようなもので一杯になります。何か約束をしても、それが守れないと分かれば、すぐに言い訳を探します。誰かが褒められると嫉妬し、選択肢があれば何も考えずに楽で得なほうを選びます。そして、思い通りにならないと不平不満を口にし、弱みを見せまいと怒りを爆発させることもあります。 ● 考え方がマイナスになると 高い能力と熱意が逆効果になる このように、ほとんどの人間は、いくら正しい考え方が大事だと分かっても、すぐにマイナスの考え方になってしまう弱さを持っています。なぜでしょうか。 稲盛さんは、生命を維持し子孫を残すために必要な食欲などの欲望や他者から自分を守るための怒りなどは、本能として生まれたときから私たちの心の中にビルトインされているからだと説明しています。
ですから、正しい考え方を持ち続けることは難しく、特に私たち凡人の考え方は簡単にプラスからマイナスに変わってしまいます。そして「考え方」が少しでもマイナスに振れると、いくら「能力」が高く、「熱意」を持っていても、人生は悪い方向へ一気に進んでしまい、それまでの努力さえ無駄になってしまいます。それほど人生は厳しいものだということも、この方程式は教えているのです。 このように、「考え方」とは極めて大事なので、稲盛さんは、繰り返し、どんな環境に置かれようと、揺らぐことのない哲学にまで自分の「考え方」を高めなければならないと教えているのです。 それが、稲盛さんがよく話をする「心を高め続けなければならない」ということなのですが、現実の社会では、心を高めようと必死になって努力をしている人間は少ないのではないでしょうか。知識としては正しい考え方を知っていても、それを哲学にまで高め、ブレることのない判断基準にしている人はあまりいないように思います。 ● 「年上だから正しい、年下だから未熟」は誤り 常に心をアップデートしないと老害になる 特に組織の中では、とにかく上司が正しいと思っている人、前例さえ踏襲すればいいと思っている人、利益さえ上げれば何をしてもいいと思っている人も少なくないように思います。それが企業不祥事がなくならない原因でもあると思うのです。