稲盛和夫が教える「平凡なのに成功する人」に共通しているシンプルな事実
たとえば、健康で優秀で「能力」が90点という人が自分の能力を過信して努力を怠るならば、「熱意」は30点ぐらいでしょう。すると、「能力」90点に「熱意」30点を掛けるので、結果は2700点となります。一方、自分の「能力」は人並みで60点ぐらいだろうと思い、誰よりも頑張ろうと情熱を燃やし、ひたすら努力を続ける人がいるとします。その「熱意」を90点とするなら、「能力」60点に「熱意」90点を掛けて、結果は5400点となります。つまり、先の有能な人物と比べて倍の結果を残すことができるのです。 このように、たとえ平凡な能力しか持っていなくても、熱意を持って努力を続ければ大きな成功を収めることが可能になることを、この方程式は教えています。 ● 「考え方」「熱意」「能力」 3つの要素の中で最も大切なのは…… しかし、大事なことは、ここに「考え方」が掛かってくることです。「能力」や「熱意」と違って、「考え方」にはマイナス100点からプラス100点までの大きな幅があります。これがこの方程式で最も重要なところであり、人生・仕事の結果を良くしようと思えば、「考え方」を高めなくてはならないことを示しています。 どんなに厳しい環境になっても、あるいは成功を収めたとしても、悲観的になったり傲慢になったりせず、プラスの「考え方」を持ち、維持しなくてはならないのです。
なぜならば、「能力」が高ければ高いほど、また「熱意」が強ければ強いほど、「考え方」によって、人生や仕事の結果は大きく異なってしまうからです。そのような、どのような環境になっても変わらない「考え方」を稲盛さんは「哲学」と表現しています。 この「考え方」の大切さを示す例は、枚挙にいとまがありません。ちょっとした挫折に遭遇し、人生を諦めるようなマイナスの「考え方」になった人もいます。成功し栄華を極めたような人が、「考え方」がマイナスになった結果、傲慢になり、没落してしまうケースも後を絶ちません。 過去には、「能力」に恵まれ、「熱意」もある高級官僚が、最後に「考え方」を間違い、国家に損害を与えただけでなく、自分の人生や仕事の結果も無残になった例もあります。日産を再建されたカルロス・ゴーンさんも、恐らく、最後に「考え方」を間違ったのだろうと思います。 ● 小学校で習う初歩的な道徳心が ビジネスにおいても重要になる では、どのような「考え方」を持つべきなのでしょうか。稲盛さんはそれを「人間として正しい考え方」と表現しています。それは何かといえば、子供の頃に親や学校の先生から教えてもらった、「やっていいこと、悪いこと」であり、「嘘をつくな」「正直であれ」「人のために役立ちなさい」「一生懸命努力しなさい」「弱いものをいじめるな」「欲張るな」といった初歩的な道徳律のようなものです。