9月の利下げ幅で見方が分かれる(米国8月雇用統計):米国景気減速・円高で日銀利上げは後ずれも
9月は0.25%の利下げか
現時点では、9月の利下げ幅は0.25%となる可能性を見ておきたい。現時点で確認されうる所では、利下げの初回から0.5%で始めるほど米国経済の減速は深刻ではないと考えられるためだ。また、FRBが大幅な利下げを実施することで、景気減速が思いのほか深刻ではないか、との市場の憶測を強め、金融市場の動揺を招くことを避ける観点からも、0.5%の利下げにはFRBは慎重なのではないか。 ただし、それ以降については、経済指標が下振れれば、年内は連続した利下げが実施され、その中に0.5%幅の利下げが含まれる可能性は考えられる。
米国経済の減速傾向が強まれば日銀の追加利上げは後ずれも
日本と米国の金融政策が逆方向に動く、という異例の事態が進んでいくもと、2022年以降に急速に進んだ円安は、この先着実に修正されていくとみられる。現時点では緩やかな円高基調を予想するが、米国経済の減速が予想外に進み、FRBの利下げ観測が強まれば、急速な円高基調となるだろう。その場合は株価の下落を伴う形で、日本経済にも打撃となる。 今年3月以降の日本銀行の金融政策正常化は、米国経済の堅調と円安進行という外部要因に後押しされた面があるが、これらが変化し、米国経済の減速とFRBの大幅利下げ観測が強まり、円高のペースが強まれば、日本銀行の追加利上げペースは今までよりも低下するだろう。 現時点では、日本銀行は来年1月に追加利上げを実施すると見ておきたいが、米国情勢が変化すれば、その時期がさらに後ずれする可能性も出てくるだろう。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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