気づいたら減速? ドライバーが自然にスピードダウンする「視覚トリック」をご存じか
ドライバーに動機づけを与える錯覚
文字通り、道路に ・ハンプ(凸状の部分) ・狭窄(きょうさく。車道を狭くする構造) を設置する方法もあるが、これには基礎工事や一定の施工期間が必要で、当然費用もかさむ。しかし、積水樹脂(東京都港区)が販売している「ソリッドシート」は、物理的な障害物にならず、車道幅を侵さないため、施工が早く、基礎工事も不要というメリットがある。このイメージハンプなら、デメリットを避けながら設置することが可能だ。 また、ハンプの場合、 「バイクや緊急車両が通過する際」 に逆に危険になることがある。ハンプを越えるときに騒音が発生したり、トラックでは荷崩れしたりする危険もある。しかし、イメージハンプならこうした問題もなく、スムーズに減速を促すことができる。 さらに、イメージハンプと同様に錯視を活用して、車両の速度を積極的に制御する標示もある。それが「オプティカル・ドット」と呼ばれるもので、志堂寺和則「交通安全のための錯視」(応用物理学会)という論文によると、ドットの間隔を広げたり狭めたりすることで、速度を低下させたり回復させたりする効果が期待できるという。 このように、イメージハンプだけでなく、目の錯覚を利用した事故防止サインは、設置にかかる費用や労力を軽減できるため、今後さらに普及することが期待される。
リアルな世界で安全を生み出す錯視
制限速度や一時停止を示す道路標識は街中でよく見かけるが、多くのドライバーはそれらの標識を認識していても、実際には守れていないことが多い。しかし、錯視をうまく利用したイメージハンプは、これらの標識とは異なり、ドライバーの 「感覚」 に働きかけるため、事故防止に役立っている。 道路が狭くなれば自然と減速したくなる心理を利用し、疑似的にそのような状況を作り出して減速を促している。これは「減速しなければならない」という強制的な意識ではなく、ドライバーが自然に速度を落とすことを引き起こすため、効果が高いといえるだろう。 ただし、錯視を利用したバーチャルな手法なので、 「ドライバーが慣れてしまう」 と効果が薄れるという弱点がある。しかし、施工が簡単で、実際にハンプを設置するよりもコストが抑えられるため、効果が薄れてきた場合には、デザインを変更するなどして改善できる可能性がある。
喜多崇由(フリーライター)