【前半総括】「おむすび」を“雑な朝ドラ”と評価するのはまだ早い? 震災を描くために“ギャル”が欠かせなかった理由《あの朝ドラ金字塔との共通点も》
「ギャル要素いる?」「『虎に翼』より浅い」辛辣な評価に感じた“違和感”
連続テレビ小説「おむすび」(NHK総合ほか)が折り返し地点を迎えた。本作は、元号が平成になったその日に生まれ、6歳のときに阪神・淡路大震災に被災した主人公・米田結(橋本環奈)がギャル文化と出会い、栄養士となって「縁・人・未来」と大切なものを結んでいく青春グラフィティ。 【画像】ギャル姿の結(橋本環奈) 「幸せって何なん?」との週タイトルがついた年内最後の放送週、第13週では、星河電器の社内食堂で栄養士として働く結と、彼女の恋人であり、同社の社会人野球部に所属していた翔也(佐野勇斗)に破局の危機が。将来はプロ野球入り、さらにはメジャーリーガーを目指していた翔也は肩を故障して、野球の道を閉ざされてしまった。結を「幸せにできない」と、翔也は別れを切り出し、結も売り言葉に買い言葉で受け入れる。 12月26日に放送された第64回では、結の姉・歩(仲里依紗)に「ギャル魂」の発破をかけられた翔也。一方結は、歩に背中を押されて糸島に帰り、祖父・永吉(松平健)、祖母・佳代(宮崎美子)と対話しながら自分の原点を探すのだった。 本作の制作スタッフは、物語の中で扱う栄養士、震災、ギャルなどのテーマについて相当に綿密な取材を行っている。長年朝ドラ関連の記事や書籍に携わり、現在「おむすび」のマスコミ各社向けの定例取材会に隔週で参加している筆者も、「朝ドラを作るためには、ここまで愚直に取材しないとならないのか」とあらためて驚いている。
2010年代以降いちばん低い視聴率も…
特筆すべきは震災についての描写で、これは被災者のデリケートな「心の問題」に関わるため、かなり丹念に取材をし、その結果が作劇にきちんと現れている。「他者の気持ちにわかったふりをしてはならない」「人の心の内側は他者はおろか、本人さえ気づいていないことがある」というスタンスを終始貫いて、結と、姉・歩、父・聖人(北村有起哉)、震災で亡くなった歩の親友・真紀(大島美優)の父・渡辺(緒形直人)らの「心の復興」の過程を丁寧に描いている。 しかしながら、なぜか視聴率が振るわない。第1週では16.1%あった週平均視聴率が、第12週では13.1%に落ち込んでいる(いずれもビデオリサーチ調べ。関東)。配信を含め視聴方法が多岐にわたる現代に、朝8時からの地上波本放送の視聴率を判断材料の全てとするのはナンセンスといえども、2010年代以降ではいちばん低い数字となっている。