【インタビュー】阪神・中野拓夢 思考チェンジ=進化「(来季打率3割)が達成できれば、200安打という数字は見えてくるはず」
簡単に初球で終わらない
初球を振らないことでいろいろな可能性が広がり164安打を放ち、最多安打のタイトルを獲得した
毎年恒例のタイトルホルダー・インタビュー。2023年の第1回は18年ぶりの「アレ」にリーグ最多安打で大きく貢献した二番打者から。制限の多い打順、二番を1年間務め上げた。打席で初球を振らない勇気を持ったことで、すべてが好転し進化を見せたシーズンとなった。 取材・構成=椎屋博幸 写真=宮原和也、BBM 11.5ゲーム差をつけてリーグ優勝を果たした阪神。攻撃陣では一、二番の出塁率が大きかった。一番の近本光司とのコンビで、どちらかが必ず塁上にいるイメージがあった。毎試合、毎試合ヒットを量産する2人。そしてボールをじっくり見ながら四球で出塁する2人がいた。それは相手バッテリーに大きなプレッシャーとなっていたはずだ。 ――昨年とほぼ同じ打数で昨年より7本多い164本を放っての最多安打でした。 中野 一番は、初球を振らなくなったことが大きいとは思います。その中で、二番としての役割、例えば犠打、四球、進塁打……しばりがあり、チームバッティングをしなければいけない打順の中で、最多安打が獲れたことは、すごく有意義なことだったな、と思います。 ――規制が多い打順の中で1球目を振らない、という考えにおいて何かを特に意識したということはありますか。 中野 僕の中では、“四球で出塁すること”を最初から意識して打席に立っていたということはなかったんです。近本(近本光司)さんが塁に出たときに、盗塁をするのを待ちながら、という状況もありましたので。たとえ近本さんが出塁できなかったときでも、簡単に初回を終わらせたくないという考えもありました。その中で少しでも球数を投げさせる、それだけでも相手バッテリーの受け取り方が違うな、とも感じていました。 ――――プロ入りしてからは積極的な打撃が持ち味でした。 中野 はい。ストライクが来たら積極的に振りにいくというスタイルでした。今年になってそのスタイルから変えていく間に、うまくいくことのほうが多くなったんです。そこで「このスタイルのほうがいいのかな」と思い始めたんです。 ――積極的に打っていた分、ストライクを見逃す怖さというのはなかったですか。 中野 見逃す怖さはなかったですね。でも、2ストライクに追い込まれる確率が高くなったのは確かです。そこで打ち取られる可能性が高まることへの怖さは少しありました。そこは慣れるにつれて、薄らいでいきましたけど。 ――怖さがなくなれば、余裕も出てくるのでしょうか。 中野 どちらかと言えば自分の気持ちの中では、早いカウントで打ちにいってアウトになるよりは、ある程度ピッチャーに球数を投げさせて三振したほうがいいかな、という考え方になっていたときもありました。そこは自分の中では勇気のいる決断でしたけど、うまくいったかな、と思います。 ――そう考えるようになるまでには時間はかからなかった。 中野 意外にシーズンの早い段階でそう考えるようになっていきました。それと打席を多くこなしていくうちに・・・
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週刊ベースボール