親に「早めに終活して遺言書を書いておいたら?」と提案したら激怒されてしまいました。元気なうちに遺言書を書いたほうがいい理由を親にわかってもらいたいのですが、どのように説明したらいいですか?
元気なうちに親とざっくばらんにお金の話ができるご家庭は、日本ではなかなかないでしょう。 ただ、体が弱ってから始める終活では遅いのです。今回は、元気な親にいきなり終活を勧めてみると、「まだまだ元気だから放っておいて」と怒り出すこと必須の遺言書について理解をしておきましょう。
遺言書は完ぺきにできないと思っておこう!
遺言書を書くということは、勇気がいる作業です。普段から遺言書を目にする機会が多い専門家からしても、「自分の遺言書を書く」という点で迷うのは同じです。なぜ迷うのか理解するために、自筆証書遺言の作成にあたり、必ず守らなければならないポイントを見てみましょう。 (1) 遺言書の全文、遺言の作成日付および遺言者氏名を、必ず遺言者が自書し、押印します。遺言の作成日付は、日付が特定できるよう正確に記載します。 例:「令和3年3月吉日」は不可(具体的な日付が特定できないため) (2) 財産目録は、自書でなくパソコンを利用したり、不動産(土地・建物)の登記事項証明書や通帳のコピー等の資料を添付したりする方法で作成できます。ただしその場合は、その目録のすべてのページに署名押印が必要です。 (3) 書き間違った場合の訂正や内容を書き足したいときの追加は、その場所が分かるように示した上で、訂正または追加した旨を付記して署名し、訂正または追加した箇所に押印します。 (出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度/03 遺言書の様式等についての注意事項」) 押印省略が次々に実現されてきている流れに逆らっているような「自署で押印」「すべてのページに署名押印」「訂正、追加した箇所に押印」などの厳正なルールにビックリするでしょう。遺言書を自分で完ぺきにすることはとても困難です。つまり、それを親に書いてもらうのは「元気だからこそ」です。
相続の手続きの1つ、遺産分割協議書ってこんなに大変
相続の手続きをするためには、「遺言書」もしくは「遺産分割協議書」が必要です。財産が預金であれば、原則として、預金の解約や不動産であれば登記の手続きにもいずれかが必要です。 配偶者は2分の1、子どもは2分の1などのように、もとから法定相続分という決まった割合があることをご存じの方もいるでしょうが、法定相続分にこだわらず、相続人全員の合意により、相続割合を自由に決定することは可能です。 この「相続割合を合意」して「署名押印」するためには、財産を確定しなければなりません。 元気な親に対して「財産はどこにいくらある?」と聞いておかなければ、親亡き後に財産を探し出し、相続人全員と協議して、その後、戸籍謄本や印鑑証明書などの書類を準備することを考えると、子どもが一から始めるよりも、親本人が財産一覧と必要書類を準備するほうが簡単に済みます。 特に不動産を所有している場合、きょうだいで共有していたり、登記の所有者が亡くなった方のまま変更していなかったりすると、手続きが複雑になりがちです。 これまで登記をしていなかった不動産に対しても、2024年からは登記が義務化されます。子どもからすると、親の世代で整理をしてもらっていないと、より手続きの大変さが増すということにもなります。