親に「早めに終活して遺言書を書いておいたら?」と提案したら激怒されてしまいました。元気なうちに遺言書を書いたほうがいい理由を親にわかってもらいたいのですが、どのように説明したらいいですか?
公正証書遺言と自筆証書遺言。いきなり公正証書遺言を選ぶのはハードルが高い
公正証書遺言は公証役場で公証人が作る遺言のことをいいますが、いきなり公証役場を訪ねてすぐに作れるものではありません。事前に準備する必要書類も、主なものだけでも、 ・遺言者本人の3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書 ・ 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本 ・財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票、手紙、はがきその他住所の記載のあるもの ・不動産の相続の場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書 ・ 預貯金等の相続の場合には、その預貯金通帳等またはその通帳のコピー など、挙げてみると準備のかかる書類ばかりです。 また、公正証書遺言をする場合、証人2名も必要です。これらの準備とともに公証役場を予約して訪れるというのは、気軽に訪れるというわけにもいかず、ついつい遺言書は「自筆(証書遺言)でいい」と親が言ってしまうということになるわけです。 ただ、これらの面倒を避けるために、自筆証書遺言を作成しようとしても、「全文を自筆で作成する」ことは元気でないとできないことなのです。 この3つの理由を考えると、「元気な時に遺言書を作成する」ことは、子どもから言い出しにくいことではあっても、あえて言ってみる価値はあることがわかります。 ただ、せっかく書いた遺言書が無効にならないよう、自筆証書遺言保管制度(※)を利用することはぜひ勧めておきたいものです。遺言書をチェックするという制度ではありませんが、相続の際、手続きが楽になるという意味では、役に立つ制度です。 「元気だからできるだろう」ではなく「一緒に調べてみよう」と始めてみましょう。 出典 (※)法務省 自筆証書遺言書保管制度/預けて安心!自筆証書遺言書保管制度 法務省 自筆証書遺言書保管制度/03 遺言書の様式等についての注意事項 執筆者:當舎緑 社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
ファイナンシャルフィールド編集部