浅野ゆう子 女優へのこだわり「主演じゃなくていい」
フジテレビ系昼帯ドラマ『ほっとけない魔女たち』で主演を務める、女優の浅野ゆう子。1980年代後半には、トレンディ女優として名を馳せ、ドラマ『抱きしめたい!』(1988年)では、共演した浅野温子と共に“W浅野”として絶大な人気を誇るなど一時代を築いた。10代でデビューし、50代に突入した現在も出演作品は増える一方だが、本人は「いただける役の幅が年齢と共に狭まるのが女優という職業」と、身を置く業界の厳しさを客観的に見ている。であるならば、どのような思いで『女優』を続けているのか。話を聞いた。 ■10代のころから“引き際”を意識 「年齢を一つ重ねるごとに波を感じますね。ある程度の年齢を超すと“キャリアウーマン”は出来なくなるし、“母親役”といっても、その俳優それぞれの経験やイメージによって出来るかどうかも変わってくる」と、年齢と女優としての演じる幅の微妙な関係性を打ち明ける。デビュー当時から“引退時期”について独自の考えを持っており「10代から芸能界でお仕事をしているので、この世界の厳しさは早い時期から見てきました。生意気かもしれないけれど、子供の時から『あの人は今』のような番組からお声がかかるようになったら、その時が引退だと思ってきた」と、自らの引き際を早い時期から意識していたという。 ■『抱きしめたい!』時代に女優として開眼 1974年に芸能デビュー。若手時代は大人びたルックスで年上の役を演じることも多かったが「15歳の時に、演出家の久世光彦さんからの『見た目と実年齢のギャップが埋まったら、あなたはいい仕事が出来る』との言葉を鵜呑みにやってきました。それからしばらくして、化粧鏡の前に座った時に、自分が実年齢よりも若く見えるような気がした。それが30歳、まさに『抱きしめたい!』の時代。その時に手応えのようなものを感じた」と、女優としての開眼は意外に遅かった。それでも長いキャリアの中で「辞めたい」と思ったことは一度もないという。「一つの事を続けようと思うのは、私たちの世代では普通の事。若い方が『この仕事は向いてない』と言うのを聞くたびに『それって自分で決めることなのかな?』と感じる。年寄りくさいかしら?」と笑う。 ■女優が好き だから主演にはこだわらない 輝かしい時代を経験した浅野。人気絶頂だった“W浅野”時代を「自画自賛ではないけれど、トレンドの最先端にいる太陽のような存在にしてもらって、本当に素晴らしい時間を過ごすことが出来た」と懐かしそうに振り返る。ところが、数々の主演を務めてきたにも関わらず、そのポジションに執着はない。「プライドを持って生きてはいきたいけれど、主演にはこだわっていません。いざとなったら『え?こんな役でもやるの?』と言われるような役でも引き受けるつもり。それは女優という職業が好きだから。好きこそものの上手なれ、だと思っています」と、“主演”よりも“女優”へのこだわりをみせる。実際に映画監督の堤幸彦には「“掃除婦A”でもいいから出演させて」とのメールを送ったこともあるそうだ。現在のスタンスは「(W浅野の時代から)26年経った今は、“現在の太陽”であるような存在の方々から光をいただき、ほんのりと輝く月のような存在でいたい」と、謙虚に話す。