【解説】「2024年問題」4月1日から規制適用 物流コスト上昇で…小売店、消費者への影響は? 専門家は賃上げの必要性訴え 香川
KSB瀬戸内海放送
ニュースで何度もお伝えしている「2024年問題」。働き方改革の一環で、ドライバーなどの時間外労働の上限が規制されることで起こるさまざまな問題のことですが、この規制の適用がいよいよ4月1日、スタートします。 物流業界でトラックドライバー不足が心配される中、スーパーなどの「小売店」ではすでに影響が出始めています。 【写真】荷下ろしから店内のバックヤードまでの運搬を担っていたドライバー
■物流変化で食品価格は? 午前6時、高松市のゆめタウン高松の駐車場に並んだトラック。納品にやってきたパンの製造メーカーなど8社のトラックです。 (記者リポート) 「トラックのナンバープレートを見てみると倉敷と書かれています。こちらは全て岡山のセンターから運ばれてきているということです」 こちらのトラックはゆめタウンの物流拠点の一つである倉敷市の物流センターから、果物や野菜、肉などを運んできました。 これまでは店に納品に来るのは午前7時でしたが、3月16日から1時間早まりました。その理由は……? (ゆめタウン高松/廣瀬伸作 支配人) 「トラックの運送の効率を最優先に考えて、時間を早めて対応するようになりました」 4月1日からトラックドライバーなどの時間外労働の上限が年間960時間に規制され、人手不足が懸念されています。 ゆめタウン高松でも委託している運送業者のドライバーの勤務時間調整のため納品時間を早めたわけですが、店側にも「改革」が必要でした。 (ゆめタウン高松/廣瀬伸作 支配人) 「従業員、特に荷下ろしを手伝ってくれる警備員さんの勤務時間が30分前にずれたことで、残業の方も少し出てるとコストも少し上がっている状況です」 これまでは、トラックドライバーが荷下ろしから店内のバックヤードまでの運搬を担っていました。 約1年前からは、2024年問題を見据えてドライバーの拘束時間を短縮しようと、ドライバーが行うのは「荷下ろし」までに。 店内への運搬はゆめタウンの「警備員」が担っています。ほかにも、ドライバーの拘束時間短縮のため、昼の仕入れ便については「時間指定」を撤廃しました。 (ゆめタウン高松/廣瀬伸作 支配人) 「荷物を受け取る側のオペレーションの変更も必要になってきますので、そこは柔軟に対応してですね、ドライバーさんの勤務時間の調整を優先して対応するようにしています」 一方で、別の小売店では……。 (記者リポート) 「こちらはコープかがわの物流倉庫です。コープかがわではこうした物流倉庫が3つあるということですが、2024年の秋に1つに集約する計画です」 高松市郷東町の「コープかがわ」の物流倉庫では水産物を冷凍・冷蔵しています。 ほかにも高松市と坂出市に2つの物流倉庫があり、香川県内にあるコープ15店舗に商品を納品しています。計画ではそれを2024年の秋にこちらの倉庫1カ所に集約します。 (コープかがわ 商品本部 物流チーム/松尾崇広 マネジャー) 「コスト削減ということで、常温の商品・冷蔵・冷凍商品をここで荷受けをして、各店舗へ出荷する拠点にしたいと思っています」 また、商品を運搬する際に使う台車も倉庫ごとに異なり、納品後、店舗で分類して管理する必要がありましたが、1カ所に集約することで店舗従業員の負担軽減にもつなげたいとしています。 そしてこの変化は私たちの財布にも影響を及ぼしそうなんです。 主要な食品メーカー195社の価格動向を調査している帝国データバンクによりますと、2024年1月から6月までに値上げされる予定の商品は5911品目で、値上げ率は平均19%です。 ■2024年問題で暮らしは? この値上げ率に注目すると2022年の年間の平均は14%、2023年は15%で2024年の上半期が高いのが分かります。 主な要因として帝国データバンクは「物流費」や「人件費」の増加をあげています。 こうしたコストの上昇はメーカーだけではなく4月以降、小売店側でも発生します。専門家は、こうした物流コストなどを店頭販売価格に上乗せする動きが広がるのでは、と指摘します。 (日本政策投資銀行 岡山事務所/森脇大輔 所長) 「小売業さんの方で値上げしませんということになると、利益を圧迫してしまうことになってくるのかなと。一定程度の適正な価格(値上げ)を(小売店が)求めていくという動きは広がってくるのかなと思います」 そして、値上げが避けられない状況の中、私たち消費者の負担を軽減するため、「賃上げ」の必要性を訴えます。 (日本政策投資銀行 岡山事務所/森脇大輔 所長) 「額面の給与が変わらなければ、小売店等で同じ金額で買える品目数が減ってしまうので、やはり物価が上がるのに見合う雇用者報酬(賃金)の引き上げ。われわれ働いてる者からすると生活水準を維持するには必要なこと」 労働者が実際に受け取った給与から物価の上昇分を除いた「実質賃金」の2024年1月の速報値は、2023年の同じ月と比べて0.6%減少しました。マイナスは22カ月連続となりましたが、減少幅は縮小しています。 元々はドライバーなどの長時間労働の是正を目的に行われる今回の法改正。ドライバーの収入減少も懸念されるなど多くの課題がありますが、荷待ち時間解消などの業務効率化や「賃金と物価の好循環」実現など、ポジティブな変化のきっかけにできるかに注目です。
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