黒沢清監督「『Cloud クラウド』は菅田将暉が支配する映画」とコメント!ヨン・サンホ監督からの賛辞も報告
第29回釜山国際映画祭にてアジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞を受賞した黒沢清監督をお祝いする『Cloud クラウド』(公開中)受賞記念トークイベントが10月15日、TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて開催され、黒沢監督と本作の主演を務めた菅田将暉が登壇。釜山国際映画祭の様子や、映画公開後だから話せる映画制作裏話などを語った。 【写真を見る】第29回釜山国際映画祭にてアジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞受賞のトロフィーも披露 本作は、ネット社会に拡がる見えない悪意と隣り合わせの“いま”ここにある狂気を描くサスペンス・スリラー。転売で稼ぐ主人公の吉井良介を菅田が演じ、鑑賞後に語りたくなる映画としても話題を集めている。 イベント冒頭、菅田は「黒沢監督、おめでとうございます!」と祝福。続けて「黒沢監督のファンは世界中にいるので、いまさらかもしれないけれど、僕はとてもうれしい気持ちです」と笑顔。「頑張りました」とニッコリの黒沢監督は釜山国際映画祭では、長いレッドカーペットが印象的だったと明かし、「10メートルくらいかなと思ったら、3、40メートルくらいあったのかな。(長すぎて)どう歩いていいのかわからなくなって…」と苦笑い。さらに「前にいる女優さんを追い抜くわけにはいかないから、手を振ってみたりしながら、微妙な速度で歩きました」と少々戸惑ったとし、「ああいう時はどうしたらいいの?」と菅田に質問。「僕もあまり(レッドカーペットの)経験はないけれど、多分それとない笑顔でやり過ごすと思います」と答えた菅田は、笑顔で手を振り、レッドカーペットを歩く様子を再現していた。 黒沢監督は韓国の映画監督、ヨン・サンホから本作の感想をもらったことにも触れ、「ヨン・サンホ監督は日本でも話題になった『新感染 ファイナル・エクスプレス』の監督。菅田くんについては、『単にうまい俳優ではなく、映画を支配する力がある』という表現をしていて。あまりにいい表現だったので、その後の取材からは、使わせてもらっています(笑)」とニヤリ。脚本はあてがきだったのではないかとも訊かれそうで、「それって菅田くんのために作っている映画に観えるということ。映画のテイストを全部コントロールしているような、そういう雰囲気を最初から持ってしまっているということなのかな」と、菅田をイメージして書いたものではないものの、そういうことにしてもいいと思っていると話していた。 イベントでは事前に募集した質問に答えるコーナーも。映画の感想でうれしかったのは「同業ではない友だちに『めっちゃ、おもしろかった!今度会った時にいろいろ話を聞かせて!』と言われたこと。『くらったわー』とか『泣いたわー』とか『ありがとう』とかではない、(今回のような)『おもしろかった!』のテンションは初めて。この映画をひとつのカルチャーとして楽しんでくれたんだなという感じがしました」と報告した菅田。「『いまの日本映画でこんなのあるんですね』とか『びっくりしました』というのがうれしかった。予備知識もなくご覧になった方が『まさかあんなことだとは思わなかった』みたいに言ってくれたり」と本作の感想には新鮮なものが多かったとの黒沢監督のコメントに菅田は、「なんていうのかな、『ヤバいものを体験した!』みたいな語彙力を失っている系の感想が多かったのがうれしかったです」と伝えていた。 本作をリピート鑑賞する際の注目ポイントは「音楽」と答えた黒沢監督は「2回目は少し落ち着いて(映画を観て)。どんなふうに映画ができているのか、どんな音楽がどこで入ってくるのかみたいなところを気にしていただけると」と呼びかけ、「普通は(音楽が)入りそうなところに入っていなかったり、(音を)考えて入れています」とアピール。菅田の「おしゃれなフランス映画に出てる!みたいな気持ちになれるところもありました」との反応に、黒沢監督は「音楽は、なかなか凝っているので」とおすすめすると、すでに鑑賞済みの観客からは納得!といった様子で拍手が湧き起こっていた。 最後の挨拶で、「黒沢監督の受賞といううれしい機会に登壇できて光栄です」と語った菅田。黒沢監督は「ヨン・サンホ監督のコメントにもあったように、菅田将暉が支配しているような映画です。決してハッピーな映画ではないし、人もバタバタ死ぬけれど、そこには目くじらを立てずに。映画だと思って、ダークな世界、ダークな菅田将暉を味わっていただければ!」と呼びかけ、大きな拍手に包まれながら、ステージを後にした。 取材・文/タナカシノブ