【食品産業あの日あの時】2016年8月31日・「Jリーグ YBC ルヴァンカップ」名称変更 ギネス認定されたカップ戦の存亡の危機を救った“ミラノの夜”
「ナビスコ」契約終了…危機をチャンスに変えたヤマザキビスケットの“逆転のマーケ戦略“
帰国からわずか3週間後の6月21日、村井と飯島は新大会名称発表記者会見に臨み、YBCの主力製品「ルヴァン」のブランドカラーである青をベースとした新しい大会ロゴと、特別協賛の3年間延長を発表した。会見で飯島は、当初は当年度での協賛終了を検討していたことを明かしている。ところがヤマザキグループ内の会議で説明したところ、「それじゃあ『ヤマザキカップ』にしてウチがやる、と山崎(製パン)が言い出して、それも困ったものだなと」と流れが一転し、YBCによる協賛継続が決定したという。 以降「ルヴァンカップ」は、コロナ禍による決勝戦中止(2020年)やリモートマッチ(無観客試合)、「Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」下での有観客開催など経て、今日まで継続されている。その間YBCは馴染みのなかった「ルヴァン」を浸透させ、ブランド変更によって下落したクラッカーのシェアを徐々に回復させつつある。 加えて山崎製パンでは2019年、自家製酵母「ルヴァン種(だね)」を大量生産に導入する技術を確立し第49回食品産業技術功労賞 商品・技術部門を受賞。以後、「スペシャルパリジャン」「新食感宣言 ルヴァン」といったヒット商品を生むなど、グループ内のシナジー効果も生み出している。 YBC公式サイトの「社会・環境活動」の項目には、いの一番に「スポンサー事業」として「ルヴァンカップ」が挙げられている。同社とJリーグの関係は、企業とスポーツ、そして地域コミュニティの継続的な発展を育む一つの理想像と言えるだろう。親会社に山崎製パンを持つ、同族経営の会社だからこそ可能な話だ、という向きもあるかもしれない。 だがふりかえれば、1993年のJリーグ開幕時には、食品業界からも多くの関連商品が発売された。カルビーは選手カードを添付した「Jリーグチップス」を、エスキモー(現・森永乳業)は各チームのシールを封入した「Jリーグ・バー」を、江崎グリコはチョコレート菓子「J.BALL」に加え、「ポッキー」「アーモンドチョコレート」のJリーグロゴ入りパッケージを、日清食品は各チームのマスコットをフタにあしらった「Jカップヌードル」を発売。永谷園が発売した「Jリーグカレー」「Jリーグふりかけ」はラモス瑠偉(当時ヴェルディ川崎)を起用したCMも大いに話題となった。 しかし、これらの商品の多くは、2000年代までに終売となっている。スポーツへの協賛を継続することがいかに忍耐を要するかは明らかだ。自社で大切に継続してきた、そして今後も継続していく取り組みは何か。企業の“持続可能性”は、こんな局面でも問われている。 【岸田林(きしだ・りん)】
食品産業新聞社
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