【トランプが起こした左派支持層の変化】フランシス・フクヤマが語る第二次トランプ政権の見通し
2024年11月8日付のフィナンシャル・タイムズ紙で、スタンフォード大学のフランシス・フクヤマが、トランプの勝利は米国の政治と世界全体にとり新たな時代の到来を意味すると述べている。 11月5日のトランプと共和党の圧勝の意義は、米国の有権者がリベラリズムや1980年代以降の「自由社会」の理解を決定的に否定したことにある。 米国の歴史でこの新しい局面の本質とは何か。古典的リベラリズムは、法の支配を通じて個人の尊厳を尊重し、憲法上の制約を通じて国家の干渉を制限する思想に基づいている。しかし、過去半世紀、この基本的な考えは二つの歪みに見舞われた。 第一は、「新自由主義」の台頭で、これは市場を神聖化し、経済的変化から被害を受けた人々を保護する政府の能力を下げる経済学的教義だった。第二の歪みは、「アイデンティティ・ポリティックス」ないし「ウォーク(woke)リベラリズム」の台頭だ。進歩派の関心は、労働者階級から人種的少数派や移民、性的少数派等、より狭い特定の社会的弱者への保護に替わって行った。 これらのリベラリズムの変化は、政治権力の社会的基盤を大きく変化させた。労働者層は、左派政党はもはや自分達の利益を守っていないと感じ、右派政党に投票し始めた。彼らは、自分達の生計を奪い、超富裕層を生み出した自由貿易体制に不満を抱き、外国人や環境を優先している進歩的な政党にも不満を持った。 かかる社会学的大変化は、今回の投票結果に反映された。共和党の勝利は白人労働者階級を中心に築かれ、トランプは前回より黒人やヒスパニック系の労働者を大幅に引きつけた。彼らにとり、階級が人種や民族よりも重要だった。 新トランプ政権は、第一期とは全く異なるものになろう。トランプは、全ての国の製品に対して10~20%の関税を課すと言う。この規模の保護主義は、インフレ、生産性、雇用に悪影響を及ぼす。