かつての路線バスの運転士は鉄拳制裁アリの体育会系社会だった! いまや穏やかな業界になるも「なり手」不足に悩むワケ
昔と今でバス運転士の意識が変わった
大型二種免許を取得し、大きなバスを颯爽と運転するバス運転士のその姿は「職人」といっていいものであった。職場環境もまさに「職人気質」そのもの。入りたての新人運転士はベテラン運転士からの徹底したスパルタ教育で腕を磨いていた。「さすがに冗談だと信じたいのですが、下手な運転をすると指導教官役のベテラン運転士からスパナなどによる『鉄拳制裁』が当たり前だったとも聞いております」とは事情通。 【画像】バスオタに人気の路線バスのシート位置、通称「オタシート」 同じ旅客輸送業界であってもタクシー運転士ではクルマにそれほど興味もなく、割り切って乗務している運転士が目立つなか、バス運転士には「バスが大好き」という運転士が大半であった。一子相伝とまではいわないが、親子で同じバス事業者で運転士として働くといったことは、いまでもそんなに珍しくないようである。 時代が昭和から平成、そして令和となるとそんなバス運転士の世界も変化を見せるようになる。いまどきのバスといえば、最新型では路線バスでもエアコンやパワステ(パワーステアリング)は標準装備が当たり前、そして2ペダル自動変速機も当たり前となり、イージードライブが可能だ。もちろん「ダブルクラッチ」といった職人的な運転技能は必要とされなくなってきている。 そんな令和のバス業界では新人運転士の教育もスパルタ式ではなくなっている。大手事業者のなかには、さまざまな計測機器を搭載したり、あと付け安全デバイスを装着し、客観的なデータに基づいた運転士教育というものを行っている。そして、そのなかで運転士の意識も大きく変わり、いまでもバス好きが高じてという理由で運転士を目指す人もいるが、タクシー同様に「生活のため」と割り切って運転士となる人が目立ってきている。 仕事内容に対する給与水準はけっして高いものではないが、タクシー運転士も含めて正社員採用されれば社会保険など待遇面は手厚くなっており、中高年となっても正社員登用されやすいという理由が大きいようである。