水俣病マイク切り問題で注目されたけど…解決へ進展なし 被害者、衆院選で「置き去り」を懸念
水俣病被害者団体と前環境相との5月の懇談で、環境省が被害者側の発言中にマイクを切った問題から半年近くが経過した。再懇談の実施など動きはあったが、全面解決を目指す被害者にとって大きな進展はない。被害者側は議論が置き去りにされるのを懸念し「水俣病は環境行政全体のあり方に通ずる。国政の重要課題として取り組んで」と訴える。 【写真】獅子島・諸蒲島の位置を地図で確認する
7月に長島町獅子島などで設けられた伊藤信太郎前環境相と団体側との再懇談を経て、環境省は2025年度予算の概算要求に、離島の未認定患者が島外の医療機関に通う際に支給される「離島加算」を月千円から2000円に増額することなどを盛り込んだ。一方、被害者側は「要望した額は1万円。手放しには喜べない」と口をそろえる。 通院にどの程度の費用が必要なのか。獅子島の漁師で未認定患者の夫妻=いずれも67歳=は月2~3回、熊本県水俣市へ療養に向かう。獅子島幣串港と水俣港を結ぶ定期船を使う場合、船代が往復で1人約千円、港から病院までタクシー代往復約4000円と1回の通院で計約5000円がかかる。獅子島片側港から定期船に車を乗せ、長島町諸浦港経由で行く時は往復約3000円。諸浦港から病院までは片道1時間半程度の距離だ。 妻は「バスの便が少なく、タクシーを使わざるを得ない。交通費がさらに高騰すれば、十分な通院は難しい」。夫は「現地に来れば、2000円の補助では足りないと分かるはず。同じ目線に立って考えてほしい」と求める。
再懇談で継続的な協議の場を設けることが約束された。国や鹿児島・熊本両県、被害者団体による「実務者協議」が開かれている。 被害者の早期救済を求めて活動する「ノーモア・ミナマタ被害者・弁護団全国連絡会議」は衆院選に合わせ、各政党に公開質問状を送り、問題の認識を尋ねた。同連絡会議事務局の元島市朗さん(69)=水俣病不知火患者会事務局長=は「あらゆる健康課題が起きた時、国民を守るのが環境行政の使命。日本の公害対応は水俣病が基盤になっているが、今の施策で本当に命と健康が守られるのかが問われている」と話した。 ◇被害者団体が9政党に公開質問状、8政党から回答 水俣病を巡る国家賠償請求訴訟原告らでつくる「ノーモア・ミナマタ被害者・弁護団全国連絡会議」は衆院選に合わせ、比例九州に候補者擁立を予定した9政党に公開質問状を出し、21日、8政党から回答を得たと発表した。5政党が水俣病問題を「国政で取り組むべき重要課題」としたが、現行の救済制度や健康調査に対する見解は割れた。
【関連記事】
- 「福島の教訓は風化していないか」…脱炭素社会の実現旗印に原発回帰進むエネルギー政策 増え続ける電力需要の中で、再エネ導入にも課題山積
- れいわ山本太郎代表は国民生活向上へ消費税廃止を訴え、立民泉健太前代表は自民の裏金事件糾弾し政権交代呼びかける 衆院選後半戦の鹿児島市、野党幹部が支持求め街頭演説
- 自己肯定感がしぼむ子ども、頼りの教諭も多忙極め余裕を失う…家庭でも、学校でもない〝第3の居場所〟は誰がつくる?
- 県都決戦、狙いは浮動票 前職2人に新人が挑む激戦区 党幹部らも現地入り、「裏金」だけじゃない三者三様の訴え続く〈衆院選鹿児島1区〉
- 参政党・神谷宗幣代表が街頭演説「安保こそ争点」 岸田政権の外交をばっさり「いつ戦争に巻き込まれるか分からない」 鹿児島市