数学五輪で世界4位の狩野慧志さん「1問を8時間解き続ける」驚異の集中力
狩野慧志さん(長野・松本深志高校2年)は7月、各国で選抜された高校生らが競う「国際数学オリンピック」(IMO2024、イギリス開催)で世界4位となり、金メダルを獲得した。幼稚園で掛け算をマスター、中学1年生で大学レベルである数学検定1級を取得した狩野さんが、普段どう勉強しているのか聞いた。(文・黒澤真紀、写真・本人提供)
「答えにたどりつく」までの過程にワクワク
狩野さんは今年7月、世界108カ国・地域の予選を勝ち抜いた609人が参加した「国際数学オリンピック」で世界4位に入り、上位約12%に与えられる金メダルを獲得した。高校1年で参加した前回大会での銀メダル獲得に続き、2年連続のメダルだ。 数学オリンピックをはじめとする数学のコンテストは、「競技数学」とも呼ばれる。一方、高校受験や大学受験を想定した数学は「受験数学」と称されることがある。 「受験数学は、ある程度やり方やパターンを覚えて解く。けれど競技数学は、模範解答通りじゃなくても、論理的に正しければ点数がもらえる。答えにたどりつくまでにどうやって解こうか、考えを巡らせるのがおもしろい」 競技数学を解く過程は、独自のアプローチが光る場だ。そのワクワクが狩野さんをとりこにする。
2歳でたし算、幼稚園で掛け算をマスター
母によると、1歳半のときから数字に興味を持ち始め、2歳頃にはすでに1桁のたし算が、幼稚園では掛け算ができるようになった。小学校に入り、たし算やひき算を繰り返す単調な計算は退屈だったが、数独パズルに夢中になった。 小学3年のとき、両親に勧められ、初めてジュニア算数オリンピックに出場し、上位50%以上となる成績優秀者・Bランクに入賞した。その後も算数や数学への関心は加速し、中学1年生のときには数学検定1級を取得した。現在、学校で学ぶ数学では「たまに計算ミスはします」と笑うが、理解できない部分はほとんどない。
「1問を8時間」考え続けられる集中力
「好きだからやる」。根底にあるのは、それだけ。解いてみたい問題をインターネットや国際数学オリンピックの過去問から探し、じっくり考えるのが狩野さんの日常だ。 「見つけた問題を片っ端から解いていくこともありますが、『解きたい』と思う問題を探してから解くこともある。特に決まったルールやタイミングはなくて、考える余裕があるとき、考えたいときに考えるんです」 1つの問題に4時間かけることも珍しくなく、「最長で8時間考え続けたこともあります」。解けない問題にぶつかると、これ以上考えても何も出てこないところまで考えを絞り出す。それでも分からなければ模範解答を見て、どんな考え方が必要だったのかなどを振り返る。多くの時間をかけても、解法を見つけ出す喜びや成長の実感が得られるという。