好調商社への追い風止む、5社中4社が今期純利益予想を据え置き
(ブルームバーグ): 新型コロナウイルス禍後、好業績が続いてきた大手総合商社への追い風がやみつつある。ここ数年中間期決算で通期業績予想の上方修正が続いてきたが、今年は5大商社のうち4社が見通しを据え置いた。
6日に出そろった5大商社の決算で、純利益の通期予想を引き上げたのは三井物産のみ。液化天然ガス(LNG)関連の配当や物流で見込まれる利益増が主な要因として200億円引き上げた。他4社では、主に中国景気の減速による原料炭や鉄鉱石などの金属資源の価格下落が業績の重しとなっている。
ブルームバーグのデータによると、2024年3月期までの3年間はほぼ全社が中間決算に合わせて純利益の予想を上方修正していた。新型コロナウイルス禍後の世界的な経済回復やエネルギー価格の高騰といった恩恵が薄れる中、今後も成長し続けられるかが課題だ。
著名投資家のウォーレン・バフェット氏による投資をきっかけに注目が集まる中、商社各社は株主還元策に力を入れてきた。ただ原資となる利益が稼ぎにくくなることで状況が変わる可能性もある。
岩井コスモ証券の清水範一シニアアナリストは、「株主還元強化の流れではあっても期待以上の還元は出にくくなるのではないか」と見る。
明るい兆しもある。脱炭素に関わる事業では、各社純利益の増額を見込む。
三菱商事や三井物は、脱炭素への移行期のエネルギーとして需要が拡大するLNG分野で稼ぐ。住友商事では欧州での風力発電事業が堅調という。丸紅は電気自動車(EV)などに使われる銅の事業で、鉱山の採掘遅延が解消して下期に利益が伸びるとする。
資源事業の比率が小さい伊藤忠は、デサントなど繊維事業が好調だ。石井敬太社長は6日の会見でデサントについて「特に中国で大きく伸びた」と説明。またデサントの買収による評価益を下期に見込み、繊維事業の利益予想を400億円引き上げた。
清水氏は、各社とも事業ポートフォリオが多角化して市場には左右されにくくなってきたものの、今後も環境変化を見ながら中長期で取り組む必要があると指摘した。
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Koh Yoshida