米倉涼子らが熱演する「エンジェルフライト」 国際霊柩送還士という仕事が見せる「死」と「生」の交錯、人生と社会
NHK BSプレミアムドラマ「エンジェルフライト」(日曜よる10時)は、海外で亡くなった邦人を故国に、日本で亡くなった外国人を祖国に送還する「国際霊柩送還士」という仕事を通じて浮かび上がる「死」と「生」が交錯するドラマの傑作である。 【写真で見るエンジェルフライト】 送還士役の米倉涼子や松本穂香、城田優らの抑制したなかにも感情を噴出させる演技の数々は、彼らの俳優人生にとって画期となる作品となるだろう。
映像で描かれる国際霊柩送還士の仕事
原作は佐々涼子によるノンフィクション「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」(集英社文庫)。ノンフィクション作家の新人賞としては最高峰ともいえる「開高健ノンフィクション賞」を2012年に受賞している。BSプレミアムで放送中の作品は実は、昨年春にAmazon Prime Video で配信されたものを一部編集したものである。 Amazon Prime Videoの作品がNHKで放送される。Netflixなども含めてネットの映像配信の時代を迎えて、ひとつの作品が地上波と共有される新たな歴史を感じさえする。 映像の配信先は「Window」と呼ばれる。映画時代は、航空機のファーストクラスが封切前のWindowであり、全世界あるいは日本全体の映画館で上映される前に先行上映の「ロードショー」があった。NetflixやAmazon Prime Videoは新しい時代のWindowである。
「エンジェルハース」社は、日本の国際霊柩送還士の先駆けとして社長の伊沢那美(米倉涼子)と会長の柏木史郎(遠藤憲一)が設立した。日本人が海外でテロや災害などに遭って亡くなった遺体を運ぶ。逆に日本で亡くなった外国人の遺体を本国に送る。 欧米とくに米国では遺体をエンバーミング(防腐処理)する資格もあり、日本に運ばれてくる遺体の状態は悪くない。しかし、一部の国ではこの防腐処理が極めてずさんなことが多く、伊沢(米倉)らのチームは、羽田空港の貨物エリアに届いた遺体の棺を開ける瞬間に緊張を強いられる。 顔の表情が崩れているばかりではなく、腐敗した遺体からの大量の体液に悩まされる。この遺体をあたかも静謐(せいひつ)な死を迎えたように処理して、遺族のもとに届けるのである。葬儀の日時や時刻に追われて短時間の作業を強いられる過酷な仕事である。