「中高年の転職の厳しさを知ってほしい」憧れの職業パイロットから、アルバイト掛け持ち生活に転落 「実家がなければホームレスだった」
会社に診断書を提出したが、その後に面談した産業医の言葉に耳を疑った。 「疲労状態ではなく、不眠症にしました」 パイロットは航空法で定められた厳しい健康診断「航空身体検査」で基準をクリアしなければ乗務できない。「疲労状態」であれば問題ないが、「不眠症」となると基準をクリアできず、国土交通大臣が個別に審査して操縦を認めるかどうか判定する。 結局、条件付きで航空身体検査に合格。会社への不信感はあったが、乗務に復帰した。ところが、今度はアルコールハラスメント「アルハラ」が待ち構えていた。 チームリーダーの機長が、早朝のフライトにもかかわらず未明まで飲酒を繰り返す。飲み会の誘いを一度は断ったが、周囲から「うまく立ち回らないと」と諭され、やむなく同席するようになった。 大手企業と違い、勤務先の小規模な航空会社では、同じ機長と月に二度は巡り会ってしまう。「気まずくしたくないという思いがあった。機長に昇格するためには仕方がないと考えていた」
長時間の酒席で睡眠不足の上、直前までの飲酒で体調が悪い状態での操縦により、再び体調不良に陥った。最終的にパイロットの資格は停止となった。 その後は地上職勤務となり、給料は激減した。年収は副操縦士時代の半分以下。2015年、退職を申し出た。 ▽転職活動は苦労の連続。それでもジェットスターに しかし、40代になってからの転職活動は簡単ではなかった。 まず、愛好家が集まる飛行クラブの運営会社に入ったが、経営難で倒産。次に離島を発着する便の運航を目指す会社に採用されたが、資金難で自主廃業となり、解雇された。 2018年春、格安航空会社(LCC)ジェットスターのパイロット職に応募した。採用試験では、人事から資格書類のほか航空身体検査に関する書類や診断書の提出も細かく求められた。津雲さんは精神科医による診断書も含め、包み隠さず応じた。 その年の6月12日、転職活動中の津雲さんの元にジェットスターの採用担当者から吉報が届く。「選考の結果、採用試験に合格されました」