『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』ジム・ブロードベント 過去の記憶を掘り下げるように歩いたよ【Actor’s Interview Vol.40】
旅も歩くことも大好き
Q:これは夫婦の物語でもあります。血のつながった親子関係は意外と短く、血のつながっていない夫婦関係の方が長く続く。本作を観て改めてそう感じました。 ブロードベント:ハロルドとモーリーンの夫婦関係は悲しいものでした。夫婦として何か一つの関係性に自分たちを閉じ込めてしまっていた。お互いに話すこともなく、お互いの痛みや辛さを認知することもない。まるで違う世界で生活しているようなところから映画は始まります。そこには喜びもコミュニケーションもなく、怒りや恨み、恐怖心が存在している。しかもそれを、お互い分かち合えないでいる。 ハロルドは衝動的に旅に出ることになりますが、この旅のおかげで自分を見つめ直し、自分と他人を分かち合えるようになる。それで最後には、彼ら夫婦はお互いの共感を得ることが出来る。自分の思いを話せるようになるんです。そこがこの映画の素敵なところですね。 Q:ロードムービーは、人間が旅をする意義について考える機会を与えてくれます。旅についての思いは何かありますか。 ブロードベント:旅は好きですよ。子供の時に北欧に住んでいたことがあり、船に乗ってノルウェーに行ったことがありました。それが初めての一人旅で、開放感を味わえて最高の経験でした。「自分は独立した一人の人間なんだ」と感じたことをよく覚えています。それ以来、旅をすることが好きになりました。旅の途中で人と出会ったり、何かを見つけたり経験したりすることが大好き。ハロルドの旅にも同じ部分がありますよね。 Q:ハロルドの“歩く”というシンプルな行動は、人生そのものに感じました。 ブロードベント:ロンドンを歩き回るだけでも色々と経験できる世界があります。歩くこと自体、体に良いことだし、街歩きも地方の田舎を歩くことも大好き。電車やバスで遠くまで行って、歩いて帰ってきたりもしています。歩くという行為には根源的な何かを感じますね。
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