<16カードここに注目 センバツ交流試合>昨夏決勝の熱闘再び 全国トップ級の履正社打線、雪辱誓う星稜 第4日第1試合
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が8月10日から、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる。15日の第1試合で対戦する履正社(大阪)と星稜(石川)の見どころや両チームの戦力、学校紹介、応援メッセージを紹介する(※全国大会出場回数は今春のセンバツを含む)。 【フィジカルトレーニングもしっかり】筋力を鍛える履正社ナイン ◇先手必勝目指す履正社 星稜は序盤の得点がカギ 昨夏の甲子園と同様に先手必勝の履正社に、星稜がどう食らいつくか。序盤の攻防がポイントになりそうだ。 履正社打線は全国トップクラス。3番・小深田大地は7月の練習試合でも本塁打を量産。引きつけて打つため、確実性も高い。4番・関本勇輔は昨秋の公式戦11試合で28打点を挙げた勝負強さが魅力。2番には一発のある田上奏大が入り、重量感が増した。岡田龍生監督は「しっかり振っていきたい」と言う。 序盤に得点し、最速147キロの長身右腕・内星龍や安定感抜群のエース右腕・岩崎峻典が余裕を持って投げる展開が理想的だ。 星稜の林和成監督は「去年の決勝と同じ、5、6点の勝負」と予想する。理想の展開に持ち込むには、エース右腕・荻原吟哉が立ち上がりの失点を防げるかが鍵を握る。昨夏の甲子園では2試合に登板し、経験値はある。スライダーやツーシームなどで的を絞らせず、粘り強く投げたい。 打線はしっかり振れる選手がそろう。昨夏の甲子園でも中軸を担った知田爽汰や内山壮真は長打力があり、2人の前に走者をためたい。履正社のお株を奪う先制攻撃が決められれば、昨夏の雪辱を果たす機会は近づくはずだ。【安田光高】 ◇因縁相手に士気高まる履正社 持ち味はハイレベルなプレー 昨夏の甲子園決勝戦でも星稜と対戦し、接戦を制して全国制覇を成し遂げた。選手たちは「夏春連覇」を掲げて練習に臨んできたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で今春のセンバツが中止になり、「大会連覇」の目標も夏の全国選手権中止で絶たれた。しかし、センバツ交流試合で因縁の相手との再戦が決まり、選手の士気は最高潮に達している。 投打のかみあったハイレベルなプレーが持ち味だ。昨秋の大阪府大会では準決勝までコールド勝ち。決勝こそ大阪桐蔭に延長戦で敗れたが、4点差の九回に追いつくなど粘り強さを印象づけ、近畿大会でも4強入りを果たした。 切れ目がない打線は、昨秋の公式戦11試合でチーム打率4割2分5厘。昨春のセンバツから甲子園の土を踏む池田凜(3年)や打率5割超の小深田大地(同)、チームトップの4本塁打を放った主将の関本勇輔(同)らが軸となり、強力打線をけん引する。 投手陣の柱は、昨夏の甲子園で優勝投手になったエース右腕・岩崎俊典(同)。最速145キロの直球に巧みに変化球を織り交ぜて相手打者を打ち取る。190センチの長身から力強い球を投げる内星龍(同)の成長も著しい。 コロナ禍で4月から練習を自粛し、6月16日から全体練習を再開。約2カ月のブランクを取り戻そうとグラウンドを駆け回る選手を前に、岡田龍生監督は「(選手たちは)野球ができる喜びに満ちあふれている」と感慨深げだ。 星稜との再戦に、岡田監督は「ドラマチックとしか言いようがない」と表現し、「この一戦にすべてをかけたい」と表情を引き締める。関本主将は「熱く、粘り強い試合をしたい」と闘志を燃やしている。【隈元悠太】 ◇履正社・関本勇輔主将の話 (星稜は)北信越大会を優勝し、投打ともにレベルの高いチーム。一人一人が課題を持って高い意識で(練習に)取り組めている。常に感謝の気持ちを持って全力で頑張っていきたい。 ◇19年夏に初V 女子硬式野球部も強豪 1922年に大阪府福島商業学校として創立され、野球部も同年に創部。83年から現校名。97年夏に甲子園初出場。女子硬式野球部も強豪で、昨夏の全国高校女子選手権で準優勝した。OBに山田哲人選手(ヤクルト)、T―岡田選手(オリックス)、岸田護コーチ(オリックス)ら。大阪府豊中市。 ◇「野球部はシンボル」履正社高保護者会長・島津典弘さん 野球部は生徒と保護者にとって大切なシンボルのようなもの。昨年甲子園で手に汗を握りながら、白球を追う選手たちを応援したことは忘れられません。今春のセンバツでも甲子園で強力打線が快音を響かせるのを楽しみにしていました。 それだけに新型コロナウイルスの影響とはいえ、春夏の甲子園中止はとても残念でしたし、選手たちの心境を思うと心中察するに余りあります。しかし、交流試合としてもう一度、甲子園でプレーができるチャンスができたと聞いて、大変うれしく思います。 試合当日はアルプス席に行くことはかなわないかもしれませんが、テレビの前でダイヤモンドを駆ける選手のみなさんにエールを送ります。 ◇守りから打へ 新生・星稜が雪辱期す 昨夏の甲子園は、奥川恭伸(ヤクルト)-山瀬慎之助(巨人)のバッテリーを中心にした「守り」の野球で準優勝した。今年は一転、「打」のチームだ。昨秋の北信越大会では全4試合で58安打44得点と圧倒し、2連覇を果たした。 打線の中心は、1年の夏から中軸で甲子園にも出場した主将の4番・内山壮真(3年)。小柄だが長打力を備え、バットコントロールも巧みな全国有数の強打者だ。広角に打てて勝負強い知田爽汰(同)、長打力のある今井秀輔(同)が前後を固める。小学生時代にゴルフで鍛えたスイングスピードが持ち味の中田達也(2年)、パンチ力がある出村夢太(同)ら下級生にも力のある打者がそろう。 投手陣は甲子園で登板経験のある荻原吟哉(3年)、寺西成騎(同)の両右腕が軸になる。制球が良い荻原はスライダーが切れ、寺西は長身から投げ下ろす直球に威力がある。ともに完投能力があり、大崩れしない。 現チームが発足した昨年の秋は守りの粗さが目立ったが、冬場に守備練習に多くの時間を割いて克服した。遊撃手だった内山は中学以来となる捕手に転向し、巧みな配球で投手陣を引っ張る。 チームは6月から約2カ月ぶりに全体練習を再開したが、選手たちは軽快な動きを見せた。林和成監督は活動休止中、各自がそれぞれの課題と向き合うため練習メニューを個々に任せていたが、意識の高さがうかがえる。 チームの目標は全国制覇。達成する舞台はなくなったが、昨夏の甲子園決勝で敗れた履正社が対戦相手に決まり、選手の士気は一段と高まった。内山は「自分たちの全てを表現する試合にしたい」と意気込む。その言葉はチーム全員の決意でもある。【石川裕士】 ◇星稜・内山壮真主将の話 (履正社は)投手力もすごく高いが、特に打撃力が非常に高い。昨年の夏の借りを返すことを胸に、多くの方に元気を与えられるような試合ができるように頑張りたい。 ◇夏準V2回 卒業生に松井秀喜さんやサッカー本田圭佑選手 1962年創立で、野球部も同年創部。甲子園での最高成績は、夏は95年と2019年の準優勝、春は8強が3回。サッカー部や陸上部なども盛ん。OBに松井秀喜さん(元米大リーグ・ヤンキース)、村松有人コーチ(ソフトバンク)、サッカーの本田圭佑選手、馳浩・元文部科学相ら。金沢市。 ◇「プレーで後輩たちへメッセージを」 星稜高保護者会長の松本健さん 甲子園は目標を具体化する場所。これまで先輩たちが甲子園に連れて行ってくれて、必要なことや、勝ち進むためにすべきことを教えてくれました。1試合ですが、先輩から学んだものを表現して、後輩たちにメッセージが伝わる戦いをしてほしいです。 部員たちは勝つ素晴らしさ、負ける悔しさの両方を味わい、真剣に野球と向き合ってきました。活動再開時もすぐに前を向き、練習に励んでいました。夏の甲子園がなくなり保護者も落胆しましたが、彼らの前向きな姿勢のおかげで再スタートを切れました。 相手は履正社。皆の強い思いが引き寄せたのでしょう。一球一打から心の成長が伝わる、気迫あふれるプレーを期待しています。