【全文】「無罪主張に絶句し泣き崩れた」大阪地検元トップ“性的暴行”事件 被害の女性検事涙ながらに訴え
■「司法の中にも同意の意義などを正確に理解していないものが少なからずいて被害者をさらに傷つける」
きのう(10日)の中村弁護人の会見で被告人(北川被告)が無罪を主張しました。被告人のそれぞれの主張に対して、私が今お話できること、検事としての知見や知識から客観的に述べられることをお話していきたいと思います。 被告人は具体的には、「事件当時、被害者が抗拒不能であったことは、合理的な疑いがある。事件当時、被告人には、被害者が抗拒不能であったという認識がなく、被害者の同意があったと思っていたため、犯罪の故意がない」と主張しました。 そして被告人は「自分の記憶と認識に従って主張することにした」と述べています。 この「抗拒不能ではなかった」、「抗拒不能の認識がなかった」、「同意があったと思っていた」について、述べたいと思います。 報道を見ていると、ほとんどの性犯罪事件で「同意があった」、「同意があったと思っていた」という同意誤信が主張されています。 そして残念ながら警察官、検察官、裁判官、弁護士さんという司法の中にも、性犯罪の本質や同意の意義などを正確に理解していないものが少なからずいて、勇気を振り絞って被害申告した被害者をさらに傷つけ、被害申告したことを、後悔させ、一生苦しませるという事態が、多く起きています。 そして法律を熟知する検事正であった被告人までもがこのような弁解をしているわけです。 そうすると、性犯罪者は皆、同じような主張をするでしょう。 このように性犯罪の本質だったり、同意の意義だったりを正確に理解し、国民の皆様方や司法関係者に周知徹底することが必要だと考えています。 令和5年7月施行の「不同意性交等」が導入された刑法などを一部改正する法律、令和5年法律第66号を成立させる際に、衆参両議院の各法務委員会において、以下の付帯決議が付されています。 抜粋ですが、不同意性交等における同意の位置づけ、及び意義、また地位、関係性要件などの改正法の趣旨及び構成要件について、国民に対する普及啓発を推し進め、十分に周知徹底を図るよう努めること。 司法警察員等の関係者に対しても、法改正の趣旨を周知徹底し、十分な研修等を行うこと、とされています。 これは、政府及び最高裁判所に求められていることであり、当然検察庁にも求められたものです。