【対談】毛利悠子×イ・スッキョン:ヴェネチア・ビエンナーレ2024日本館での展示を語る
現代アートの国際展:第60回ヴェネチア・ビエンナーレ
第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展が4月20日に開幕し、11月24日まで開催される。 今回、ナショナル・パビリオンの日本館(主催:国際交流基金)の展示作家に選出された毛利悠子は個展「Compose」を開催。キュレーターはイ・スッキョン(マンチェスター大学ウィットワース美術館 ディレクター)で、日本館のキュレーターを外国人が務めるのは史上初となる。 プレビューが行われた4月17日、美術評論家の沢山遼を聞き手に招きふたりにインタビューを行った。本展にとって重要な水という素材についてや、ヴェネチアでの制作、ふたりのシスターフッドにまで話は及んだ。【Tokyo Art Beat】
吉阪隆正建築との対話
──本日は時間をとっていただきありがとうございます。まず、今回の展示の構成について教えてください。 イ:最初に私たちふたりが議論したのは建築のことで、パビリオンとなるこの吉阪隆正の建築を、それに対抗するのではないかたちで、どう扱えばよいかということでした。この建築はとても古く、興味深い歴史をもったもので、また床と天井に穴が空いているという、とても特異な特徴があります。 悠子は、初期の段階からその特徴を作品に包含し組み込むこと、そしてそれを水のような物質といかにリンクさせるかを考えていました。彼女はそのことに強い関心をもって作品の可能性を探っていきました。 ──この建築の特徴的な構造は、吉阪の考えである「不連続統一体(Dis-continuous Continuity)」というアイデアに関係していますね。私は毛利さんの作品もまた、この「不連続統一体」というアイデアに関連すると思います。 イ:私もそう思います。この建物の構造は、建築の外部と内部の区分を曖昧にするものであり、そのことは、建築とはなにか、自然とはなにかという問いと関わっています。それは悠子自身の作品との重要な共通点となっていると思います。吉阪が1950年代後半に思い描いたアイデアは、再び重要なものとなっています。というのは、毛利悠子のような若い世代のアーティストにとっては、いかにして自然を取り込んでいくかが重要な問題となっているからです。