地球温暖化を信じない「共和党」支持者たち…政治思想による断絶間近の「アメリカの現状」
現実を直視する人、目を背ける人
そんな時、もう一つまったく別の語り方があるということに気付かせてくれた映画がある。アダム・マッケイ監督、レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ドント・ルック・アップ』(2021年)だ。ある日突然、地球を目指して宇宙の彼方からやってくる彗星が発見されるというストーリー。人類滅亡の瞬間が刻々と迫る中、危機を避けるための国際協調は成立せず、主にアメリカ人の登場人物たちは結局、彗星衝突という危機の存在を信じる人たちと信じない人たちに分かれて党派的な言い争いに終始する。お金と権力のある人たちは、自分たちだけ助かればいいと、地球外への脱出を計画する。 この場合の彗星とは、明らかに温暖化のメタファーだろう。米国のシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターによると、アメリカでは民主党支持者の78パーセントが温暖化を深刻な脅威ととらえているのに対し、共和党支持者ではその割合は23パーセントにまで下がる。本来、政治とは無関係の自然科学の領域に属するはずの話ですら、党派によって分断が進んでいるのが今日のアメリカの病理だが、こうした分断にいつまで日本が無縁でいられるかは予断を許さない。 真正面から危機を訴えることも大切だが、必ずしもすべての人が聞く耳を持ってくれるとは限らない。特に、はじめから見たい現実だけしか見る気がなく、温暖化の脅威も否定したい人たちの目をどう向けさせるか。想像力や創造性の発揮しどころだ。 『「大統領が直接労働者を激励」!? 日本人の想像をはるかに超えるアメリカの「ストライキの実態」』へ続く
井手 壮平