16歳のプロ久保建英の誓い。「サッカー選手として大きな存在でありたい」
2月1日は大半の選手が、所属クラブとのプロ契約をスタートさせる日でもある。 最初に壇上に上がった村井チェアマンは未来への自己投資として、練習や試合以外の時間を有意義に使い、サッカー以外のスキルを身につけることの重要さを説いた。 10歳の夏から約4年間をラ・リーガの名門、FCバルセロナの下部組織の一員としてすごし、スペイン語に習熟している久保の心にも響くものがあった。 「語学の大切さは自分でもわかっているので、どうにかして他の言語もマスターしていきたい。模範的な答えになっちゃうんですけど、やはり英語ですよね。サッカーはどの国に行っても、英語をしゃべれる選手がいると思うので」 新人研修は3日の午前中まで行われ、SNSの使い方や反社会的勢力への対応、アンチ・ドーピング問題など合計で13もの講義を受講。最後は5年後の自分へ向けて手紙を書いて終了する。まだ便せんには何もしたためていないが、手紙の内容はおぼろげながら決めている。 「何かもやもやした表現で申し訳ないんですけど、サッカー選手として大きな存在でありたい、というのはありますね。久保選手を見てサッカーを始めました、と言ってもらえるような。より大きな影響を周囲に与えられるような、ひと言で表現すれば『すごい選手』になることが僕の目標でもあるので」 いい結果を残して自分を含めた周囲の価値を上げる。英語の習得にトライする。そして、サッカーを始めた5歳のころから思い描いてきた目標に近づく――21世紀生まれでは初めてとなるJリーガーが立てた3ヶ条の誓いは、大好きなサッカーを楽しむマインドと密接にリンクしている。 「楽しいからサッカーをやってきたので。それがプロになったからとか、ある程度成功したからといって変わってしまえば、いままでの成長のスピードというものも変わってしまうんじゃないか。そう考えただけで、ちょっと怖くなってしまうんですけど。 だからこそ、楽しくサッカーをやれているうちは、どんどん上にあがれると思っているので。先のことはわからないところもありますけど、いまはサッカーができる喜びをかみしめながら1試合1試合、毎日毎日を大切にして、できるだけ長く、いつまでも続けていきたいと思っています」 FC東京のトップチームの一員として決める初ゴールが期待される一方で、昨夏までサンフレッチェ広島を指揮した森保一監督(49)に率いられるU‐21日本代表が3月に行う南米遠征へ、いわゆる「飛び級」で招集されるプランも浮上している。 実現すれば2年後の東京五輪へつながる第一歩となるが、いま現在を120%で生きることをモットーとしているからか、ゴール数などの数字はいっさい公言しなかった。 「シーズン前に目標とかを掲げるのが、自分はあまり好きじゃないので。シーズンが始まってから具体的な目標が増えてくれば、またそのときに、ですね」 取材対応後は夕食をはさんで、午後8時まで自主トレの時間が設けられていた。雨が雪に変わるあいにくの悪天候のなかを、糸満キャンプへの途中合流まで待てないと言わんばかりに、トレーニングウエアに着替えた久保は無邪気な表情を浮かべながら、仲間たちとグラウンドへ繰り出していった。 (文責・藤江直人/スポーツライター)