ぶいすぽっ!随一の“ゲラ笑い”コンビ 英リサ&橘ひなのが吹かせた“新しい風”を追って
偶然重なった奇禍が生んだ繋がりの連鎖 “はなばな”コンビの人徳
英リサ・橘ひなのの2人が配信上で初めてコラボしたのは、デビューから2日後のこと。2020年8月16日に、同じく同期である兎咲ミミとともに3人で『Apex Legends』をプレイした。 あらためて配信を振り返って見ても、すでに仲良しな空気がにじみ出ているふたりだが、英が橘のことを「ひなーの」呼びではなく「ひーちゃん」と呼ぶなど、いまとはまた違った、少しづつ距離感を定めている様子が伝わってくる。 ところで、橘ひなのは「『Apex Legends』をプレイするときは1人だとできない。1人でやっていると寂しくなってくるから人と一緒にやりたい」と話すことが多い。実際、デビュー直後の『Apex Legends』配信ではソロでの配信をいくつかやっているものの、時を経るごとに誰かとデュオ・トリオを組んでの配信が大半となっていった。 そんななかで、お決まりのコラボ相手となっていたのが、他でもない英リサである。まだデビューから日も浅く、ぶいすぽっ!内外の友人がほとんどいなかった2人は、ゲーム・配信を通じて仲を深めていき、“はなばな”コンビとしてさまざまな配信をともにすることになる。 また「はなばな」の名を冠するコンテンツとして、2人でラジオ配信をしていたこともある。これは早々に更新が途絶えてしまったが、二人の掛け合いをたっぷり楽しめるオススメの番組だ。 その後は徐々にVTuber~バーチャルタレントとしての活動にも慣れ、自分なりのポジションを徐々に確立していった2人。賑やかし役・ボケ役としてアップテンポなコミュニケーションをする英、一歩引いて“付かず離れず”な立ち位置からツッコミを入れて場をまとめる橘、お笑い芸人でいえばボケ・ツッコミという関係性が形作られていった。 ボケとツッコミを繰り返し、笑えば豪快に「ガハハ!」と笑いあう“はなばな”の2人。ぶいすぽっ!ファンの間で、「メンバー各々の笑い方」は注目されるトピックなのだが、そもそも注目されるようになったのはほかでもないこの2人の豪快な“ゲラ笑い”があったからだ。その後、空澄セナ、花芽なずな、藍沢エマ、白波らむねなど、「ぶいすぽっ!メンバーの笑い方がエグい」と話題にあがるようになったのだ。 また2人の交友関係・繋がりが、その後のぶいすぽっ!全体へと繋がっていることも多々ある。 たとえば、現在ぶいすぽっ!に所属している神成きゅぴ・小森めとの2人。英・橘が活動をスタートさせた最初の半年、つまり神成・小森の加入前からコラボ配信しており、現在でも見られる仲の良さ、その原点を見ることができる。 神成とは『Apex Legends』を共にプレイすることが多く、プロも参加するスクリム戦に3人で参加するなど、“戦友”としての付き合いも長い。その流れもあり、3人の名前の頭文字を取って作られたクラン「hqr」を組んでいたことは、長年のぶいすぽっ!ファンであればご存じだろう。2024年2月にスタートした『Apex Legends』シーズン20のアップデートによりクラン制が無くなってしまった際は、3人共に非常に残念がっていた。 小森とは神成とともに『Phasmophobia』を4人でプレイしたのが初のコラボとなった。いまでこそ肩にパンチしあうように仲良く会話のキャッチボール(ときにドッジボール)をする4人だが、さすがにこのときはまだ距離感があるのが見て取れる。そのよそよそしさも、時間を経てまったく無くなってしまったので、今となっては貴重な映像だ。 余談だが、この4人は同じ2020年デビュー組でもある。神成が1月、小森は5月にそれぞれデビューしており、彼女らの前後にも多数のタレントがデビューしている。 また、2019年後半から2021年始めごろの間ーー、つまりコロナ禍の時期は、いまやFPSシーンにとって欠かせない女性VTuber~バーチャルタレントが数多くデビューした時期としても振り返ることができる。 一例を挙げると、ぶいすぽっ!からは胡桃のあ、兎咲ミミ、空澄セナ、如月れん、八雲べにが、にじさんじからはラトナ・プティ、アルス・アルマル、奈羅花の3人が、ホロライブからは常闇トワがデビューしている。個人としては猫麦とろろ、夢野あかり(当時は濃いめのあかりん)らがデビューしており、2021年に入ってすぐには天鬼ぷるる、赤見かるびらが活動をスタートさせている。そして、この面々のなかに神成と小森、そして英と橘も加わるのだ。 今後二度はないだろうといえる奇禍のなかにあって、増え続けるファンの後押しを受けてそれぞれが人気を獲得していった彼女ら。徐々にコラボ配信をする機会が増え、各種大会や大人数参加型サーバー企画などで何度となく顔を合わせていくこととなる。おそらく、同じFPSゲーム好きな女性VTuberの仲間として、あるいはライバルとしてお互いを強く意識していただろう。 もしもいま「FPSゲームで女性VTuber限定大会をやるならば?」と言われれば、彼女らの名前は確実にあがるはずで(もちろんほかにも沢山の女性プレイヤーがいることは承知のうえだ)、2019年後半から2021年始めまでに登場した彼女らは、各々の歩み方は違えどVTuber~バーチャルタレントシーンにおけるFPSゲームの面白みを広げ、引っ張ってきた面々、いわば戦友ともいえる。 橘からの誘いを受けた神成が2021年1月から、英・橘の先輩である一ノ瀬うるはとも仲が良かった小森が2023年1月から、それぞれぶいすぽっ!に所属・活動をしており、さらに以前から英と知り合いだったという八雲もぶいすぽっ!からデビューしている。こうしてみると、今のぶいすぽっ!における英・橘の影響力や、人徳が成したことを感じずにはいられない。