楽しい推し活、その問題点とは?
好きなアイドルを追いかけてコンサートに出かけ、ポスターやグッズを購入する──こんな青春の思い出が皆さんにもあるのではないでしょうか。同様の行為をイマドキは「推し活」と呼びます。「推している人など」を応援する活動という意味です。推しの新作などの情報をSNSで拡散し、同じコンサートツアーに何度も出かけたり、同じグッズを複数個購入したりといった行為をします。推し活の様子をSNSで公開し、ファン同士つながって応援します。 スタディプラスが2024年3月に公表した「推し活についての調査」※1によると、中高生の80%以上が推し活をしていると回答しています。その対象は、「K-POPアイドル・韓流俳優」「J-POPアイドル」「アニメ」が上位に挙がっています。「アニメ」は意外に思うかもしれませんが、アニメに登場する人物を推し、缶バッジやグッズなどを集めます。 ※1 スタディプラス「推し活についての調査」 推し活は約半数が小学生から始めており、きっかけは「YouTube」が最も多いそうです。
推し活にはお金が必要
調査によると、91%の中高生が推し活にお金を使っており、そのうちの70%以上が1カ月に5000円以内の金額を使っているとのこと。学年が上がるにつれ、「1万円以内」と回答する人が増えています。全体的に、年齢とともに推し活に投じる金額が上がっていくのが分かります。 推し活をすると、ファンクラブにも加入したくなります。ファンクラブ限定の配信やグッズ販売、未公開の自撮り写真、音声メッセージなど、特典が多数用意されているからです。 K-POP人気に伴い、推し活の方式も韓国の文化が入ってきています。「ヨントン」は、好きな芸能人と個別にビデオ通話ができる仕組みです。10~30秒程度と短いことが多いのですが、直接ビデオ通話ができるため、権利を得るためにアルバムCDを購入し、抽選に参加します。絶対に通話したい人は、何枚もCDを購入します。 YouTubeなどのライブ配信サービスで「投げ銭」をする(配信者に金銭を送る)10代もいます。国民生活センターが2023年7月に公表した事例※2では、小学生が30万円以上の投げ銭をし、親のクレジットカードから引き落とされました。 ※2 国民生活センター「ライブ配信サービスで投げ銭! 高額課金に気を付けて」 ネットで知った「地下アイドル」(ライブハウスなどを中心に活動するアイドル)を好きになると、「チェキ」を撮影する、デートをするといったオプションで課金が必要になります。 やがて推し活に関する出費でお金が不足し、高額でリスクが高いバイトを始める人もいます。 推し活自体は楽しいものですが、金銭面では湯水のようにお金を取られる仕組みが用意されています。あまりにもハマっていると感じたら、周囲が注意してあげてください。 出典:日経パソコン、2024年5月13日号より 鈴木 朋子=ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 日立ソリューションズにてシステムエンジニア業務に従事、のちフリーライターに。SNS、スマホ、パソコン、Webサービスなど、入門書の著作は20冊を越える。ITの知見と2人の娘の子育て経験を生かして、子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」として活動中。近著は「親が知らない子どものスマホ」(日経BP)、「親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本」(技術評論社)