フォルクスワーゲン・パサート vs アウディRS6(C6) スペースとスピードの両立 新車か中古車か?(2)
洗練度が高く粘り強いパサートの足まわり
カーブを何度か通過すれば、その差は縮まる。RS6は四輪駆動で強力なトラクションを発揮する一方、パサートは足まわりがしなやか。洗練度が高く粘り強い。 11段階に調整できるアダプティブダンパーを1番引き締めても、姿勢制御がRS6級にタイトになるわけではない。しかし、優秀なMQBアーキテクチャーが、安心感の高い操縦性と安定性を生み出す。乗り心地も素晴らしい。 ステアリングホイールは軽く、6速デュアルクラッチATはスムーズにギアを切り替える。普段使いとの親和性は遥かに高い。駆動用バッテリーが満充電なら、最長112kmを電気だけで走ることもできる。 当然といえるが、RS6は乗り心地が硬い。旋回途中の不意な凹凸でラインが狂うほどではないものの、負荷が高まるほど強い入力を吸収しきれない場面が出てくる。 油圧アシストのパワステを備え、ステアリングは重め。小さくないV型10気筒エンジンは、フロントアクスルから大幅に前方へはみ出ているから、敏捷に回頭するとはいい難い。C6系のRS6は、カーブで設計の古さを滲ませる。
2024年でも特別感あるRS6のインテリア
実用性は、全長4917mmあるパサートは有利。後席側の空間は、全長4923mmのRS6より広い。荷室容量も1760L対1660Lで、新しい方がパッケージングに優れる。 それでもRS6のインテリアは、2024年に見ても特別感がある。実際に押せるハードスイッチがふんだんにあり、時代遅れのインフォテイメント・システムの操作を補える。 パサートには15インチのタッチモニターが備わるが、大きすぎて運転の集中力に影響を及ぼす。頻繁に操作したい機能の多くはサブメニュー下にあり、操作性が良いわけでもないだろう。 ただし、ランニングコストがRS6の選択を最終的に怖じけさせるかも。V10エンジンは、エンジンルームへパンパンに収まっている。簡単なメンテナンスでも、作業にはかなりの労力が必要になる。 巨大なトルクを受け止める6速ATは、3万2000km毎のフルード交換が推奨されている。タイヤは4本で1000ポンド(約19万円)。ブレーキの交換などにも、同程度の出費が必要になる。燃費は、右足をそっと傾け続けても、7.0km/Lを超えることはない。 どの角度から評価しても、賢明なチョイスが新車のパサートであることは否定できない。9代目の新型は、歴代最高の完成度にある。ファミリーカーとしての要件を満たし、高級感も低くない。欠けているのは、至高のV10エンジンだけだろう。