僧侶たちも興奮状態。紫式部が見た「中宮彰子」のあまりに異様すぎる“出産光景”
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は中宮・彰子の出産時のエピソードを紹介します。 著者フォローをすると、連載の新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。 【写真】中宮・彰子は出産直前に、白い御帳台に移られた。写真は清涼殿の御帳台 ■中宮・彰子の身体に異変が起きる 寛弘5年(1008)9月9日、出産を控える一条天皇の中宮(藤原道長の娘)・彰子に異変が起きていました。 『紫式部日記』によると、紫式部が御前に参上したのは、空が月にかかる夕暮れ時の頃。すでに、小少将の君や大納言の君などは、御前に控えていました。
お香を取り出して、香りを試していた中宮に、女房たちは「庭の景色が綺麗なこと」「蔦の色づきが待ち遠しい」などと語りかけていました。 そんなやりとりも垣間見ることができましたが、中宮の様子は、いつもより苦しげだったようです。その様子を見て、紫式部の心はざわめきます。 その後、紫式部は局(部屋)に下がって横になり、仮眠のつもりが、深く寝入ってしまいました。 そして夜半になると、屋敷は騒がしくなり、ガヤガヤと人々の声が紫式部の耳に入ってきます。
(いよいよか……)。紫式部の心は湧き立ち、それからは一睡もしなかったのでしょう。 明け方頃、中宮は白い御帳台(天蓋付きのベッド)に移られます。道長やその子どもたち、四位や五位の官人たちが、御帳台の白い帳を、ワイワイ言いながら掛けたようです。 その日の中宮は不安げな様子で、起きたり、横になったりを繰り返しながら、過ごされました。 そんな中宮の周りには、数カ月前から集められた僧侶や修験者、陰陽師がそろって集合しています。
ある者は大きな声を出し、中宮に取り憑いた物の怪を追い出して、形代(呪術の道具)に移すための作業を行いました。そして、陰陽師はお祓いをしていました。 紫式部はこのときの様子を「多くの者が加持祈祷をしている。仏が飛び回り、邪霊退治をされているに違いない」と日記に記しています。祈祷の声の騒々しい様子が伝わってきますね。寺院に読経を依頼する使者も、その日1日、慌ただしく動いていました。 ■中宮への想いが募り泣き出す女房も