「チョコザップは追わない」 エニタイムが狙うフィットネス市場再構築
若い男性以外にも利用者層を広げるため、23年12月、老若男女が運動している様子をアピールしたテレビCMを放送した。24年6月にも、テレビやウェブを使った広告を全国で展開予定。CMの最後に女性を映すことで、利用者層の広がりを印象づける。 従来の「体をただ鍛える場所」から、前向きに生きていくための自己実現をサポートする場所という意味を込めた「ライフモチベートプレイス」であることを伝え、利用のハードルを下げる狙いだ。現時点で会員比の大きな変化は起きていないが、今後利用者層が広がることを期待する。 提供サービスを多様化し、客単価の底上げも図る。例えば一部店舗は水素水サーバーを設置。月1000円(税別)で飲み放題としており、現在の契約率は約15%という。 また山部氏は「チョコザップに行った後に、物足りないから、もう少し本格的なところでやりたいという人がそのまま移ってくるケースもある。チョコザップの拡大はエニタイムフィットネスにとっても良いインパクトがあると思う」と話す。 在宅勤務の定着などで運動の必要性を強く感じるようになった人は増えている。日常で運動不足を感じている人の需要を取り込むため、チョコザップの力をうまく利用して会員へと誘導したい考えだ。エニタイムフィットネスが浸透しきっていない地方にも出店を拡大するという。 ●女性向け新業態を準備、さらにM&Aも 女性の取り込みに向けては、エニタイムフィットネスとは別の新業態を準備している。バレエのバーを使用した高反復・低刺激の負荷トレーニングとして考案された、米国発のエクササイズ「The Bar Method(TBM)」だ。ピラティスやヨガなどの要素を融合し、基礎代謝を上げ持久力を高める効果があるとされている。FFJは24年度中に日本1号店のオープンを目指す。 TBMはFC中心のエニタイムフィットネスとは異なり直営店で展開する予定。個人のペースでトレーニングするエニタイムフィットネスに対して、先生に教わりながらレッスンするスタジオ型のエクササイズのため、運動初心者にも対応できるという。 さらにM&A(合併・買収)による事業拡大も積極的に検討している。「うちのジムブランドを買ってほしいという問い合わせが増えている」と山部氏は明かす。 チョコザップが引き金となった「安値競争」によって業界全体が消耗戦の様相を呈する中、業績が芳しくない店が出てきていることが背景にある。「ジムの出店ブームに乗ってポンポンと店を出したはいいが、なかなか会員が集まらず、値下げしてさらに経営が苦しくなっているケースは増えている。おそらく数年以内に複数のブランドがまとまっていく、あるいは離脱していくと思う」(山部氏) エニタイムフィットネスは28年3月期末までに国内1400店舗体制を目指す。これはチョコザップの現在の店舗数(約1500店)にも届かない数字だが、チョコザップに追い付きたいという考えはないという。フィットネス市場は店舗数だけがいびつに伸びるステージから、生き残りに向けた合従連衡のステージへと移行していくのかもしれない。
関 ひらら