「チョコザップは追わない」 エニタイムが狙うフィットネス市場再構築
着替え要らずで気軽に運動ができ、しかも低価格。ここ数年、国内のフィットネス市場を席巻するのが「chocoZAP(チョコザップ)」だ。店舗数が約1500店、会員数120万人と業界首位を独走しているが、フィットネス市場全体は意外にも伸び悩んでいる。 【関連画像】マシンが所狭しと並ぶエニタイムフィットネス店内(写真=Fast Fitness Japan提供) これまでスポーツジムやフィットネスクラブの月会費は安くても5000円以上のところが多かった。だが、2022年に本格展開が始まったチョコザップが税込み3278円と一気に価格帯を引き下げ、これまで会費の高さから入会をためらっていた層を獲得した。一見すると市場の裾野拡大に成功したようだが、「新型コロナウイルス禍前から展開していた旧来型店舗の客の戻りは鈍い」と帝国データバンクの担当者は話す。 帝国データバンクが24年3月に発表した調査によると、フィットネス市場の規模(事業者売上高ベース)は23年度で6500億円前後だったと見られる。コロナ禍で落ち込んだ20年度から着実に回復しているものの、金額は過去最高だった19年度(7085億円)比で9割前後の水準にとどまる。店舗数こそ大きく増えているが、市場が拡大しているというよりは、市場の中心が低価格ジムに移っているというのが実態に近いようだ。 ●「フィットネスブームまだ来ていない」 チョコザップ登場前から急成長していたのが、米国発の24時間ジム「エニタイムフィットネス」。世界で5000店舗以上を展開し、日本では1100店舗以上、会員数は80万人を超えている。しかし23年、店舗数でチョコザップに抜かれた。 エニタイムフィットネスを国内で運営するFast Fitness Japan(FFJ)の山部清明社長は「チョコザップは競合にはならない」とした上で、「フィットネス人口がぐっと増えているかというと、意外とそうでもない。我々のプロモーション次第でまだまだ市場は伸びると考えている」と話す。 直営店のみで展開するチョコザップと異なり、エニタイムフィットネスはフランチャイズ(FC)展開を中心に店舗を拡大してきた。国内店舗のうち、FCが8割以上を占める。プールやサウナなどの水回り設備は置かずにマシンジムに特化し、警備会社と連携して特定の時間以外は無人営業にするなどして効率的な店舗運営モデルを構築してきた。 会員の約9割が40代以下と比較的若く、男性が8割弱を占める。山部氏は「老若男女にアピールしていたが、結果的に若い男性に支持されている」と話す。実際に都内のエニタイムフィットネスに足を運んでみると、いわゆる「マッチョ」の男性が施設内のほとんどを占めており、ジム初心者にとっては緊張感のある空気がただよっていた。初心者をターゲットとし、普段着で運動できるチョコザップとは対照的な雰囲気だ。 エニタイムフィットネスはもともと運動習慣がある人や、本格的に体を鍛えたいと考える人をターゲットにしている。月会費も7000~8000円台が中心で、安くはない“正統派”のジムだ。このため年齢と性別で偏りが出るのは仕方ない面もあるが、業界の中心が低価格ジムに移る中、巻き返しに向けた軌道修正は欠かせない。