三吉彩花「嘘をついて生きたくない」本心と向き合って見えた本当の自分
そして、彼女の苦しみを体現するために「私自身も抱えているコンプレックスや、引っかかっていることに向き合う必要があると思った」とまっすぐな瞳を見せる。「私は昔から、家族との向き合い方に難しさを感じていて。撮影に入る前に、そこにきちんと向き合ってみることにしました。自分にとって何が心地よいのか、心地悪いのかを理解することがとても大事で、それを三好の生き様や心のあり方に投影していけたらと思っていました」と告白。「その時間は、自分の人生にとっても転機になったと思います。すごくいいタイミングをいただけた」としみじみと語る。
役と一つになれた
「自分の本心と向き合い、自分をさらけ出すことが必要だった」と役づくりに力を注いだ三吉。タッグを重ねながら、数々の名作を生み出している石井監督、そして池松と過ごした時間も刺激的なものとなった。 「石井監督と池松さんの関係性は、とても面白いと思うんです。同じ歩幅で歩いているという感じではなく、お互いが自分の役割に集中していて、それでいて背中合わせで触れ合っている。その背中合わせの部分から、2人のつながりや信頼感が見えてくるんです」と特殊なチームワークから、ものづくりの醍醐味を味わった様子。
「夏の暑さで体力的にもしんどく、精神的にも削られて苦しい時間ではありましたが、一方で三好と一つになれたような感覚がありました。今振り返ってみると、撮影の期間の記憶があまりないんですね。それくらい濃い時間を過ごしていました。作品のジャンルによって役への向き合い方は違ってくるものでもありますが、こうやってアプローチをしたのは初めての感覚です。こんな経験をできる現場もなかなかないですし、もうすぐ30歳を迎えるにあたってこういう作品に携われたことは俳優としても、自分自身としても大きな意味があると感じています」と28歳の胸の内を明かしながら、充実感をにじませる。
30代への展望「アクションももっと」
劇中の舞台となっている2025年では、亡くなった人の記憶やデータを投入し、AIを駆使することで、心まで感じられるようなVF(ヴァーチャル・フィギュア)としてその人を蘇らせることができる。アバターを使って、仮想空間で人と会話することも当たり前だ。何が真実で、何が嘘なのか。見えているものの実体は何なのか、人の心はどこにあるのか……など、テクノロジーが進化していく不安を共有すると共に、観客も自分の本心、そして相手の本心とも対話したくなるような作品となった。三吉に、本作を通して見えてきたのはどのようなものだろうか。 「まず三好役を通して感じたのは、嘘をついて生きていきたくないということです。自分のために選択をして、後悔せずに生きている彼女はとても強い人だなと思いました」と切り出した三吉。さらに「時間もテクノロジーも進んでいくけれど、やっぱり自分の意志に目を向けることがとても大事なんだとあらためて思いました。自分はどうしたいのか、なぜそれをやりたいのか、やりたくないのか。自分自身をよく知れば、やるべきものも見えてくるし、責任を持って発信をすることもできる」とキッパリ。