「セクシー田中さん」問題、日テレ・小学館の「調査報告書」に釈然としない理由
その中で書いたのは、今春のドラマ全体における漫画原作の割合。ゴールデン・プライム帯で放送されている計16作中、オリジナルは12作(75%)で、漫画原作が3作(19%)、小説原作が1作(6%)と、漫画原作は「5作に1作以下」の割合に過ぎないのです。しかもこの数値は過去1年間・4クール分のデータとまったく同じでした(計63作中、漫画原作は12作の19%)。 ■民放他局の反応が鈍かった理由 ゴールデン・プライム帯における現在の主流はオリジナルであり、漫画原作のドラマは限られているのです。放送収入の低下が叫ばれる中、「視聴率や配信再生数を獲得しやすい脚本・演出にし、シリーズ化・映画化・スピンオフが作りやすく、グッズやイベントでも稼げるなど、収益性の高いオリジナルを狙う」のが民放各局のセオリー。漫画原作のドラマは反響の小さい深夜帯が主戦場となっているため、出版社としては「できるだけ反響の大きいゴールデン・プライム帯でドラマ化してほしい」という切実な思いがあるのです。
そのため民放他局としては、「『セクシー田中さん』の件は過剰に意識しすぎる必要性はない」というのが本音。日ごろ原作者や出版社への丁寧な対応を心がけていることもあって、「同じようなことは起きないだろう」と見られているところがあります。 また、このところ「プロデューサーが原作者と直接交流を持つ」「ドラマのホームページなどで原作者にポジティブなコメントをしてもらう」「原作者に自身のSNSでドラマを宣伝してもらう」などの対策が取られはじめていたことも、民放他局の反応が鈍い理由の1つでしょう。
もちろん「5作に1作以下」に過ぎず、大半のスタッフが丁寧に対応しているとは言え、今回の出来事を「レアケース」と軽視すべきではなく、テレビ局と出版社には、いかに「レアケース」を「ありえないケース」に近づけていくかの取り組みが問われています。 そしてもう1つ挙げておきたいのは、両社から調査報告書が公表されたとき、ネット上に「当事者たちの名前が伏せられている」「なぜ加害者を守ろうとするのか」などの不満が散見されたこと。