OTセキュリティは実装段階に--TXOneが事業戦略を説明
制御系システム(OT)向けサイバーセキュリティ事業のTXOne Networksは11月22日、メディア向けに事業戦略を説明した。近年重要性が高まるOTのセキュリティ対策を導入する段階に入ったとし、ITシステムとも連携した包括的なサイバーセキュリティソリューションを提供していくと表明した。 同社は、トレンドマイクロの社内ベンチャーとして2019年に設立され、台湾に本拠を置く。現在はトレンドマイクロの関係会社として独立性を高めているとし、30カ国で事業を展開する。顧客は製造や重要インフラなど約5200社に上るという。日本法人のTXOne Networks Japanも2022年に設立している。 説明会の冒頭であいさつしたTXOne Networks Japan 代表執行役員社長の近藤禎夫氏は、日本法人の設立2年目で、現在の事業成長ペースが目標の100%伸長に対して87%と順調に達成しつつあることを明かした。特に国家的な戦略でもある半導体関連分野のビジネスが拡大しているといい、同氏は「2年前は、まだOTセキュリティ重要性が認識される段階だったが、現在は具体的にどう導入するのかを検討する状況に来た。お客さま、パートナー、台湾の開発やリサーチなどのチームと連携し、日本のビジネスを推進していきたい」と述べた。 TXOne Networks 最高経営責任者(CEO)の劉栄太(テレンス・リュウ)氏は、OTセキュリティへのニーズが急拡大しているとしつつも、製造現場といった環境での導入がようやく始まり出したと切り出す。ITセキュリティでは、脅威の検知・対応・復旧、統合的な運用といった段階に進んでいる一方、OTセキュリティでは、まだ保護すべき資産の把握(可視化)に着手している状況で、一歩進んでいる企業でも現場環境にマルウェア対策や侵入検知/防御システム(IDS/IPS)などの防御機能の実装を進めつつある段階だという。 同氏は、OTはITとは異なり、事業運営における高い可用性と生産性が最優先され、加えてサイバー脅威による事業停止などのリスクにも対応しなければならず、顧客の最高セキュリティ責任者(CSO)にとって、可用性と生産性、サイバーの安全性の3つの実現が一番の課題になっていると指摘した。 同時に製造や重要インフラなどの分野では、AIやデータを活用した事業運営を高度化していく取り組みも広がり、ITシステムやサイバーセキュリティを含めた包括的な対応が必要になりつつあるとも指摘する。 こうしたことから同社では、セキュリティソリューションとして、現場業務の形態に対応したIDS/IPSやマルウェア防御、保守などに使うUSBメモリーなどの持ち込みデバイスの検査などの製品を展開。直近では統合的なセキュリティ管理や脅威対応などを支援する新製品「SageOne」も提供を開始した。これらの対策製品が相互連携するとともに、サードパーティーのセキュリティ情報・イベント管理(SIEM)や拡張型脅威検知・対応(XDR)といったITセキュリティソリューションとも連動できるようにしている。 また同氏は、顧客の業界ともOTセキュリティを推進する取り組みを行っていると説明。例えば、半導体業界ではファンドリー大手のTSMCなどと台湾でサイバーセキュリティ委員会を構成しており、グローバルでは半導体製造サイバーセキュリティコンソーシアム(SMCC)にも参画。2023年には、TSCMのサイバーセキュリティ企業として初めて優秀なサプライヤー企業に選出されたとした。 今後の重点市場では、グローバルでは半導体や自動車などの製造と、医療などの重要インフラ、日本でも半導体や自動車を中心とする製造に注力していくという。 説明会の最後には、TXOne Networks 最高収益責任者(CRO)のStephen Driggers氏が、IT/OTセキュリティ市場のトレンドを解説。複数の市場調査会社の分析結果を基に、半導体や製造現場、電力、エネルギー分野が伸長していくとした。直近1年では企業の65%がIT/OTセキュリティの予算を増額させ、このうち51%がOTやIoTに特化したセキュリティソリューションを導入する意向にあるとし、同氏は「われわれはOTセキュリティの専門ベンターとして、これら分野に注力していく」などと話した。