「プロ野球90年」教育評論家・尾木直樹さんが語る大谷翔平の魅力 「人間性もスケールがでっかい。全てが魅力的で規格外」
発足から90年を迎えたプロ野球への思いを聞くインタビューシリーズ。「尾木ママ」の愛称で知られる教育評論家の尾木直樹さんの一日は、大リーグ中継でドジャースの大谷翔平の活躍をチェックするところから始まるという。教育者の視点から見た大谷の魅力とは。(聞き手 共同通信・藤原雅仁、小林陽彦) 【写真】大谷、132億円で13位 世界のアスリート長者番付
▽巨人、大鵬、卵焼き 僕は昭和22年(1947年)生まれで娯楽と言えば野球しかなかった時代。ジャイアンツが強くて「巨人、大鵬、卵焼き」と言われるほど、子どもだけでなく大人もたいていプロ野球が大好きだった。王さんの一本足打法は頭にこびりついているし、長嶋さんは今で言う「インスタ映え」のように何をやっても絵になるヒーローでしたね。長嶋さんは三塁手としてどんな打球でもさばいて一塁へ送球する。強い、うまいというよりも華麗なんですよ。それから引退時のスピーチで「わが巨人軍は永久に不滅です」と語ったように、発言のメッセージ性も非常に強い。プロ野球にはそうした人々を熱狂させるスーパースターが時々出るんですよね。 ▽私のヒーロー「大谷翔平」 大谷翔平選手(ドジャース)はやっぱり桁外れですね。野球選手としての実力はもちろんですが、人間性もスケールがでっかい。全国のすべての小学校に贈ったグラブはジュニアサイズで利き手の違いにも配慮。「野球しようぜ!」というメッセージとともに、野球に限らず何でもいいから好きなことに挑戦しようと子どもたちに呼びかけたのは教育的にも素晴らしいと思います。
道徳心や社会人としてのマナーも一流です。球場でゴミを拾う姿とか、折れたバットをバットボーイに手渡すときは、丁寧に危険でない方を前にしているでしょう。気遣いが体に染みこんでいる。野球を愛し、相手チームや審判にも敬意を示す人間性豊かなアスリート精神が、野球界だけでなく他のスポーツにまで波及し始めているのはすごいと思いますね。 最近は毎朝、ドジャース戦のテレビ中継が終わってから仕事をスタート。韓国でのパドレスとの開幕戦チケットが当選した時は飛び上がるほどうれしかった。球場で見る大谷選手の盗塁にはしびれましたね。感動した!野球はやっぱり球場で観戦するのが最高ですね。 ▽名手の陰に名指導者あり 大谷選手の出身校、岩手・花巻東の佐々木監督の指導は型にはめず、丸刈りも廃止。目標を実現するために何をするべきかを整理したチャートも面白くて、今では多くの学校が取り入れて活用しています。大谷選手は二刀流をはじめ、すべてが魅力的で規格外ですが、その原点は高校時代にあるのではないかと思います。いい指導者との出会いは大切です。