ISが犯行声明 パリ同時テロはどんなテロだったのか?
海外でのテロ(=ジハード)を扇動するIS
ところで、実行犯グループで現在も逃亡中のサラ・アブデスラム(現在、シリアに逃亡との観測がありますが未確認)の足取りから、彼が事件前の今年8月初めから、仲間とともにフランス、ベルギー、イタリア、ハンガリーなどを行き来して、テロ作戦のためのアジトや車両の調達を行っていたことが分かっています。また、彼は9月にはハンガリーで難民2人をピックアップしています。難民に偽装したテロリストです。 こうしてみると、アブデスラムはまさに計画の中心人物のひとりとして、テロ実行犯の受け入れを含む準備にあたっていたことがわかります。 この他にも、10月には、難民に偽装してシリア偽装旅券を持つ2人のテロ実行犯がギリシャに入国しています。 こうしたことから、シリアからテロ実行犯をフランスに送り込むために、難民ルートが利用されたことは明らかです。前述したように、それはフランスがシリア空爆を決める前から進められたものです。 ISの中枢は現在、海外でのテロ(彼ら自身は聖戦=ジハードと思い込んでいる)をさらに扇動する方向にあります。トルコが国境管理を厳しくしたため、越境が以前ほど簡単にはいかなくなっているからです(ただし、シリア側ではいまだ100キロ程度の国境線はISが押さえており、不法な越境を完全に防止することはできません)。 今後、シリアやイラクの各地で活動するIS現地戦友グループが、同様の事件を再び起こすかどうかは不明です。もっとも、こうしたテロに触発されて「自分も!」と考えているローン・ウルフ型テロリストが各地に大量に存在します。彼らは今後も、競うようにテロを試みていくでしょう。
■黒井文太郎(くろい・ぶんたろう) 1963年生まれ。月刊『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長等を経て軍事ジャーナリスト。著書・編書に『イスラム国の正体』(KKベストセラーズ)『イスラムのテロリスト』『日本の情報機関』『北朝鮮に備える軍事学』(いずれも講談社)『アルカイダの全貌』(三修社)『ビンラディン抹殺指令』(洋泉社)等がある