ISが犯行声明 パリ同時テロはどんなテロだったのか?
ベルギー・モレンベークの「IS帰還者」人脈
今回のパリのテロ実行グループの中心は、ベルギーの首都ブリュッセルの西部の「モレンベーク」という移民の多いエリアに誕生したIS支持者およびIS帰還者の人脈でした。 ベルギー当局によると、ベルギーからシリアとイラクでの戦闘に参加した人数はのべ500人程度。そのうち帰還したのは今年10月時点で134人だそうです。初期の参加者にはまだIS台頭の前時点で、ISに参加していなかった人もいるでしょうし、帰還者の全員がテロ人脈に合流したわけではないでしょう。しかし、おそらく100人以上のIS帰りの人脈があり、その周辺にその何倍ものシンパ・グループが形成されていたものと思われます。 この百数十人のIS帰還者というのは、たとえばフランスに比べたら格段に少ないレベルの人数ですが、人口比で考えると、ベルギーは西欧でも突出してIS参加者の比率が多くなっています。 また、モレンベーク地区当局によると、同エリアからは30~35人程度がISに参加していて、うち10人程度が帰国しているのではないかということです。ちなみに、モレンベーク地区の人口は約10万。住民の4~5割がイスラム教徒だそうです。
「首謀者」はISのリビア系過激派に参加
ベルギーからこうしたIS志願者が多く出ているのは、そうした扇動を行い、ISに紹介できるキーマンが移民社会の中に存在しているからと考えられます。ベルギーは特にモロッコからの移民が多い国ですが、実はベルギーのイスラム過激派人脈は、リビアの過激派人脈と強いコネクションがあります。 そのリビアの過激派グループは「バッタール(剣)大隊」という組織です。この組織は2012年12月に結成され、もともとはリビアで活動していたのですが、まもなくシリアに拠点を移し、ISの指揮下に入りました。 このバッタール大隊の人脈で、ベルギーおよびフランスでは、これまでもテロ事件・テロ未遂事件が起きています。その多くで、今回のパリ同時テロの首謀者とみられる前出のアブデルハミド・アバウドが関与しているのですが、彼も2013年からシリアでISのバッタール大隊に参加しています。アバウドもベルギー国籍のモロッコ系移民の子弟で、モレンベークの出身なのですが、ISではバッタール大隊の幹部格になっています。 バッタール大隊には、ベルギー国籍のモロッコ系移民だけでなく、同じフランス語話者であるフランス国籍の人間も参加していました。今回のパリのテロはおそらく、アバウドを中心とするバッタール大隊のフランス語話者グループが計画し、現地の戦友(おそらくシリア人)や、モレンベークのISシンパ人脈、フランス国籍シンパ人脈を組み込んで実行されたものと推測されます。