ISが犯行声明 パリ同時テロはどんなテロだったのか?
130人が死亡した仏パリ同時テロから1か月が過ぎました。3つのグループに分かれ、スタジアムや劇場、レストランなど複数の場所を襲撃したこの同時テロは、たくさんの民間人が集まる「ソフトターゲット」を狙ったものとして、欧州のみならず、世界に衝撃を与えました。それ以降、各地でさらにテロが頻発。12月2日にはアメリカで銃乱射テロが発生しました。 【写真】「イスラム国」はなぜ国家ではないのか パリ同時テロは、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出していますが、米銃乱射テロでは、容疑者夫婦がISの過激な思想に影響を受けた「ローンウルフ型」のテロだとされています。パリでの同時テロは、どのような形態のテロで、どのような犯行グループによって実行されたのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏に寄稿してもらいました。
たまたま「テロ志願者がいた国」で起きる
11月13日に発生したパリ同時テロ。犯行グループの背景は、いまだ不明な点はあるものの、事件から1か月が経っておぼろげに見えてきました。 どうやらISに参加したベルギー国籍義勇兵グループが、シリア内で発案し、ベルギーのイスラム系移民の中に形成されたIS支持者人脈を有効活用するかたちで、数か月にわたり準備されたものだったようです。フランスによるシリアでの空爆参加は9月ですが、それより以前に計画がスタートしたと推定されるので、動機はおそらくシリア空爆への復讐ではありません。 ISは犯行声明でもさかんに「十字軍」という言葉を使っていますが、イスラム過激派が「十字軍」という場合には、今では主に欧米主要国を指します。なかでも大国であるアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどを筆頭に、カナダ、オーストラリア、スペイン、その他の西欧先進国といった「キリスト教が多数派」で「白人が主導」する国々のイメージになります。 ISのテロは、東アフリカの米国大使館あるいはアメリカ東海岸といった標的を決めて、工作員を送り込み、時間をかけて計画を準備するような初期のアルカイダとは違い、(9・11以後のアルカイダと同じく)基本的には各地にいるシンパが自分たちで発案してテロを企画します。つまり、「標的を決めてテロを計画する」のではなく、「たまたまテロ志願者がいる国でテロが起きる」わけです。 今回のパリのテロの首謀者であるアブデルハミド・アバウドは、後述するようにIS内の外人部隊の幹部であり、IS中枢とも近いと目されていたため、事件直後には「ISは、これまでのような海外の支持者が独自に行うローンウルフ型テロリスト(組織に関与しない一匹狼的なテロリスト)を扇動する戦略から、自分たちが海外でのテロを直接計画して指揮する戦略に方針を変更したのではないか」との分析が盛んに流れましたが、今回のテロに関与した人脈をみている限りでは、そこまでは結論できません。 今回のテロは、IS内の外国人の戦友グループが主体になっておそらく計画されたものであり、IS中枢がそれに直接関与した証拠はありません。