<ラグビー>スコットランドに連敗した新生ジャパンの課題とは?
38歳とチーム最年長の大野均は、ロックとして自分より15センチ、17キロも大きな対面らとぶつかり合った後、「これだけ準備期間の少ないなかでこれだけの戦いができて、悔しさを感じられたのは幸せ」と言った。 2016年6月25日、ラグビー日本代表は、昨秋のワールドカップイングランド大会で挑んだ全4チーム中、唯一勝てなかったスコットランド代表をホームの味の素スタジアムに迎え、2連戦の第2試合目に臨んだ。後半30分に勝ち越され、16-21で屈した。 チャンスを逃し続けたクライマックスの局面を振り返り、大野は「壁を破れなかった」とも続けた。 18日、愛知・豊田スタジアムでの同カード。ジャパンは13―26と敗れたものの互角だった。ぶつかり合いと走り合いで負けなかった。 合流が6月4日からと時間が限られるなか、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ(HC)が着任前とあって正式なボスは不在。メンバー選考でも主軸への正式な招集打診の有無さえあいまいだった。かような準備状況を経ているのに、欧州6強の一角と伍せた。 その背景には、個々の国際経験があった。 フッカーの堀江翔太主将ら日本から初参戦したサンウルブズの面子を筆頭に、南半球主体のプロリーグであるスーパーラグビーで戦うメンバーがずらり。ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィのようなイングランドのプレミアシップ経験者も2名、加わった。「ポスト五郎丸歩は誰か」といった当事者さえ望まない議論は、このたび選ばれた人々が無意識的に蹴飛ばしていた。 同じくサンウルブズを指揮するジャパンのマーク・ハメットHC代行は、今年初の来日でこう感じた。 「スーパーラグビーの強度の高い試合でプレーしていることで、激しいコンタクトへの恐怖心もなくなり、(追いつめられた状況で)タクティクス(チーム戦術)を信じられるようになった」 この夜の日本代表は、試合中盤まで優勢だった。 例えば、両軍通じて唯一となる前半19分のトライシーン。初戦の課題だったラインアウトをきっかけとし、ファンを沸かせた。 自陣ゴール前左。ロックの小瀧尚弘は、ここでも「空いている(確実に捕球できる)ところはわかっていた」と確実な捕球に成功する。初戦では相手の長身ロックのグレイ兄弟に何度もスティールされていたが、この午後は2人が飛びづらいエリアで素早いジャンプをするよう工夫していたのだ。 その後はスタンドオフの田村優、インサイドセンターの立川理道副将、さらに大回りした田村と、いわゆる「ループ」の動きで展開。フルバックの松田力也が左中間のスペースをハーフ線付近まで疾走すると、一気に右大外へ攻撃が繋がる。 右タッチライン際のマフィが、相手のタックルを蹴散らしながら前進。サポートに入ったフランカーの金正奎を経て、最後はスクラムハーフの茂野海人が駆け抜けた。スコアを10―6とし、序盤の流れを作った。点差は少しずつ広がり、後半9分には16―9となった。