「人間じみた浪花節」…今日も世界のどこかで全速力で「人生の旅」を楽しむ男/元オリックス・マエストリ「カルチョの国から」08
誰からも愛されたキャラクター
始球式後にスタンドで試合観戦をしているとき、横に座られた「ヒゲの通訳」こと、レジェンドの藤田義隆さん(40年で120人の外国人選手を担当! 昨年惜しまれつつご退職)から素晴らしいお話をうかがえた。 「浦口さんね、私は印象に残る選手は? と聞かれたら、それは何人もいるんです。この世界に入って最初に担当した選手とか、うまく通訳できなかった選手とか、逆にとても仲良くなった選手とか、やはり印象深いです。でもね、この仕事をしていて一番楽しかった選手は? と聞かれたら、間髪入れずに『マエストリ!』と答える自信があります! それくらい、彼と一緒の時間は楽しかった! 彼はね、チームメートにもファンにも裏方にも誰に対しても、分け隔てなく同じようにリスペクトをもって接する人。だから私も、ほかの退職した球団OBたちも、うれしくてこうやって彼に会いに戻ってきました!」と。 始球式前も、一緒に戦った戦友や当時からいるスタッフの皆さんが彼の周りに順に集まり、途絶えることなく昔話に花が咲いた。 「○○さーん! 元気? 娘さんは○歳くらいになった? 元気してる!?」 「○○さーん! 相変わらずからいものばかり食べてないですか!?」 「○○さーん! 連れて行ってもらったラーメン屋、また行きたいなぁ!!」 名前とエピソードがスラスラ出てくることに、とにかく驚いた! 球場入りしたとき、地下駐車場から一瞬ファンの方と接触するスペースに出るが、そこに来た方ともしっかり時間を作っていた。その様子を少し寒そうにしながら見ていた娘のアジアちゃんに、「彼らはこの寒い中、僕らが来るのをずっと楽しみに待っていてくれたんだよ! 本当にありがたいね!」と笑顔で話していた。ちなみにファンの男性はボロ泣きして喜ばれていた。 オリックス時代も、群馬時代も、4カ月しかいなかった香川オリーブガイナーズのファンの方が、わざわざ試合に駆けつけて「私たちのアレックス」として彼を応援してくれていたのが印象的。侍ジャパンとの第1戦でマウンドに歩んだときに、「大きな声で名前を呼んでくれたファンがいるんだ! クールな経験だった!」と興奮気味に話すので、「じゃ、明日のホームゲームではチームパーカーを脱いで、ファンの皆さんに『91』をご披露しよう!」と提案すると、「いいね!それ!やってみるよ!」と。 本当に誰からも愛されたキャラクターだった。本当に誰に対しても愛情とリスペクトをもって接する人だった。