トヨタとBMWがFCEV開発とインフラ整備の分野で協力関係を強化へ
商用はもちろん乗用の燃料電池車普及拡大に期待
2024年9月6日、トヨタ自動車とBMWは2011年から協業してきたFCEV(燃料電池車)の開発、水素インフラ整備の分野で協力関係を強化する基本合意書を締結。水素社会実現に向けて技術革新を加速させていくとしている。 【写真】BMWとトヨタのFCEVを見る ガソリン、軽油に代わるクルマの次世代エネルギーのひとつとして期待されている水素。内燃機関で燃焼させる水素エンジンや酸素との反応により電気を生み出す燃料電池、ガソリン代替燃料である合成燃料や軽油代替燃料のHVO(水素化植物油)の原材料など、幅広い活用方法が検討され多方面で研究開発が行われている。 その中でも燃料電池の開発は世界各国の自動車メーカーによって進められ、また中国メーカーの台頭もあって、今後、燃料電池車が普及していくのではないかという機運は高まっているように感じられる。ただ、普及に向けて課題が多いのも事実で、水素の生産や運搬、貯蔵、供給といったインフラの整備が整っていないことは大きな課題として存在する。 そうした中、1990年代前半から燃料電池車を開発して現在MIRAIとクラウンFCEVの2モデルをラインナップしているトヨタは、従来からこの分野での協業をしてきたBMWと、協力関係を強化する基本合意書を締結したと発表した。その内容のポイントは「共同開発」と「2028年生産開始」、そして「インフラ整備」の3つがある。 先のふたつはわかりやすい。燃料電池車の普及拡大を目指した両者の協業は2011年に始まって、発電システムであるFCスタックをはじめ、水素タンクやモーターなど基本システム全般の共同開発が行われ、2028年にドイツ・ミュンヘンでの生産が始まると言われているBMW iX5ハイドロジェンには、トヨタのFCスタックが採用される。パワートレーンユニットを統合したことによる量産システムの構築はコスト削減につながり、トヨタとBMWにとって大きなメリットとなるはずだ。 ただ、生産/運搬/貯蔵/供給におけるインフラ整備についての具体案は書かれていない。 現在日本で生産される水素の大半は「グレー水素」といわれ、天然ガスをはじめとする化石燃料を改質して取り出されている。このとき副産物としてCO2も発生するのだが、これを回収して有効利用する「ブルー水素」の生産技術が研究されている。 つまり現時点において、水素を使っても温暖化ガスは発生しているのだ。再生可能エネルギーによる発電電力で精製された「グリーン水素」も含めて、生産システムの構築が期待されている分野である。 また、水素を大量輸送するための液化(マイナス253度)や、水素ステーションの設置費用など高コストなことも課題としてある。トヨタは水素供給網の構築に向けて「普及の黎明期にあたるいま、水素の需要を塊で創出する必要があり、水素を製造・供給する事業者とも協調し、インフラの整備や水素の安定供給、低コスト化にも取り組んでまいります」としている。 トラックやバスなど商用車を中心に導入されはじめている燃料電池システム。こうした課題が国内だけでなく、海外の関連企業とも共有されることで研究開発が加速、利便性の向上や燃料コストの低減が図られることで乗用の燃料電池車が普及していくことに期待したい。