イーロン・マスク氏は「政府効率化省」で「3割歳出削減」の大ナタをふるうか、かたやどの政党も八方美人の日本
コロナ禍で後を襲ったバイデン政権(2021~2024年)では、当初はコロナ対策で多くの歳出を要したが、コロナ禍が終わっても依然として歳出規模は対GDP比で24%を超えている。 もちろん、第1次トランプ政権期にはなかったロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・パレスチナ紛争のための国防費がかさんでいることはあるが、社会保障費が引き続き増えたままとなっており、連邦政府の財政赤字は、第1次トランプ政権期よりも悪化している。
■政権交代すると前政権の歳出を削減 歳出総額の傾向については今述べた通りだが、その間には政権交代がある。 欧米諸国では、政権交代があると、前政権では出していた歳出を見直して、不要なものは容赦なく削減することが日常茶飯事である。浮動票はあるとはいえ、それぞれの政党の支持基盤には利害得失があり、前政権の支持基盤にとって好都合の歳出であっても、新政権の支持基盤にとって何のメリットもない歳出であれば、遠慮なく削減するし、容易にそれができる。
2024年度の歳出総額が6.9兆ドルで、第1次トランプ政権期のコロナ前の2019年度の歳出総額4.4兆ドルと比べると、2.5兆ドルほど多い状態である。国防費を除いた歳出でみても、2019年度は3.8兆ドルで、2024年度は6兆ドルである。マスク氏が言及した2兆ドル削減は、まんざらデタラメではないかもしれない。 翻って、日本はどうだろうか。 10月27日に衆議院選挙が行われたが、ほとんどすべての政党が、歳出を増やすと声高に主張した。「歳出を増やす」といっさい言わずに「無駄があるからもっと削減できる」と主張した政党は皆無といってよい。また、負担軽減を主張するとともに歳出削減も主張する政党も皆無といってよい。
日本の政党は、減税を唱えても、それと同規模の歳出削減には言及しない。あるいは、歳出増と合わせて負担増に言及することもない。 他方、アメリカでは、歳出を増やす提案を出す傾向は民主党のほうが強いが、連邦政府の債務上限規定を盾に共和党が牽制するという場面がしばしばある。共和党にとっては、債務残高がむやみに増えることは認めがたいことだからでもある。 これをみると、どちらの国のほうが、民主主義の危機に直面しているのか、他人事とはいえないだろう。