なぜスーパールーキー松木玖生がFC東京の今季初Vを牽引できたのか?
最終的には選手20人、スタッフ5人の計25人が罹患。いずれもホームの味の素スタジアムで予定されていた、2月23日のジュビロ磐田とのYBCルヴァンカップ・グループステージ初戦、同26日の名古屋グランパスとのJ1リーグ第2節が延期。再始動後の2日に行われたアビスパ福岡とのルヴァンカップ・同第2節も0-1で敗れた。 開幕前から陽性者が相次いだなかで、松木は川崎との開幕戦で先発に大抜擢されて後半27分までプレー。川崎の守護神チョン・ソンリョンのファインセーブにあったものの、前半28分には利き足の左足から強烈なミドルシュートを放っている。 「緊張はしませんでしたけど、最初にボールが足につかなかったことは予想外でした。次は慣れてくると思うので、改善していきたいと思います」 川崎戦後に対応したオンライン取材でこう語っていた松木は、次の試合、すなわちセレッソ戦で有言実行とばかりに、敵地のピッチ上で群を抜く存在感を放ち続けた。 セレッソ戦後にはオンライン取材の対応選手にならなかったが、ボール奪取からわずか6秒後にゴールが生まれたプレーに対して、SNS上ではこんな言葉が飛び交った。 「松木くんはプロ何年目よ」 1月の全国高校選手権を制した青森山田高のキャプテンとして、鳴り物入りでFC東京入りした松木に対して、アルベル監督はキャンプイン直後に「成長を見守ってほしい」とメディアを含めた周囲を諫めていた。一転して川崎戦後にはこう言及している。 「彼のプレーには満足しているし、称えたいと思う。彼はもっともっと成長する必要があるが、そう遠くない将来に日本サッカー界へ大きな喜びを与えてくれるだろう」 バルセロナの下部組織でスカウトやコーチ、ディレクターを務めた経験を持つアルベル監督が描く序列を覆させた松木は、新たに標榜する「ボールを愛する攻撃的なサッカー」にスムーズに順応し、コロナ禍に見舞われたチームでチャンスをつかんだ。 初勝利と、ともに膨らんだ松木への期待感は、そのままサンフレッチェ広島を味の素スタジアムに迎える、12日のホーム開幕戦へとつながっていく。 「試合を通してボールを失わず、ゴールを決め切れるインサイドハーフになりたい」 川崎戦で得た反省をもとに掲げられた新たな目標は、その後の松木が描く右肩上がりの成長曲線と照らし合わせれば、ごく近い段階でその第一歩が踏み出されるかもしれない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)