なぜスーパールーキー松木玖生がFC東京の今季初Vを牽引できたのか?
後半アディショナルタイムが実に7分にも及んだだけに、勝利の瞬間を振り返るアルベル新監督の言葉にも実感がこもっていた。特に数的不利な状況になってからはポジションをインサイドハーフから一列下げて初めてフル出場を果たした松木を、ダブルボランチを組ませた途中出場の東慶悟(31)とともに称賛している。 「守備ブロックをなるべく下げないようにしたかったが、なかなか難しい状況だった。そのなかでも若手の一人、クリュウ(松木)は素晴らしい形でチームに貢献してくれた。ケイゴ(東)も彼の経験とともに、いい方向にチームをコントロールしてくれた」 何をもって松木はFC東京の勝利に貢献したのか。値千金の決勝点の起点になったボール奪取だけではない。ボランチとして東とともにセカンドボールの回収役を担い、それでいて下がりすぎず、機を見ては前にも飛び出していった。 後半アディショナルタイムが終了する直前には、スライディングタックルを仕掛けた際に顔面を強打してその場に悶絶した。総走行距離12.579km、スプリント22回はいずれもチームトップ。誰よりも走り、交代枠を使い切った後は歯を食いしばった。 「いいチームは、勝つためには苦しむことを知っている」 指導者としての持論を展開したアルベル監督は、10人で戦った試合終了までの時間帯を「彼らはそれをプレーで証明してくれた」と嬉しそうに振り返った。 「この2週間で人数がそろってトレーニングできたのは一回だけだった。フィジカルコンディションがよりいい状態だったら、一人少ない状況でもこれほど苦しむことはなかったと思う。そのような難しい状況で勝負にこだわり、勝利をもぎ取った選手たちの努力に私がどれだけ誇りを感じているのかは、容易に想像できるかと思います」 王者・川崎フロンターレのホーム等々力陸上競技場に乗り込み、途中からは試合を優勢に進めながら0-1で敗れた2月18日の開幕戦後に、新型コロナウイルスのチーム内クラスターが発生。同20日から1週間の活動休止を余儀なくされた。