「君、それは失礼だよ」メガバンク副頭取から教わったビジネスの必須マナー。背広から出したのは......
マナー講師の教え。これ、ガラパゴス?
20年ほど前、大学を卒業して会社に入る直前に、友人と一緒に名刺入れを初めて買いました。銀行で働くその友人は、「あまり奇抜なデザインは良くないだろう」と言って、黒革のシックなデザインを選びました。数年前に支店長にもなった彼のビジネスマナーの始まりです。 私も入社すると、新人社員向けの「ビジネスマナー研修」を受けました。 名刺交換のマナーで教わったのは、こんな内容でした。 「名刺を渡す際は、相手が読みやすい向きにした名刺を名刺入れの上に載せ、両手で持ちながら差し出します。相手に差し出すタイミングで、社名や部署、氏名を名乗りましょう。 相手が差し出した名刺よりも低い位置から自分の名刺を差し出すことで、より謙虚で丁寧な印象を与えることができます......」
このお作法は、「ビールを注がれる際のコップの持ち方」と似ています。 日本から一歩外を出ると、同じようにする外国人と出会うことは、まずありません。 アメリカや東南アジアで仕事をしてきましたが、日本流の「名刺交換のマナー」や「ビールの注がれ方」は食事の際に「ジャパニーズマナー」と酒の肴になるほどです。 「失礼のない作法」として覚えておいて損はないものの、その通りやれなかったからといって非礼にあたるものでもありません。 そんな私が、名刺交換で「君、それは失礼だよ」と、仕事相手から指導をいただいたことが一度あります。それは新聞社の経済部で、日銀の担当をしていたころのエピソードです。
夜回り取材で銀行副頭取から教わった
日銀担当として為替相場をみていた私は、同時にメガバンクなど民間の金融機関の動向もカバーしていました。 取材は、会見への出席や広報担当者と日常的に会うほか、銀行幹部への面談もあります。本店でアポをとって、役員室でお時間をいただくこともあるのですが、当然ながら、そんなに頻繁には会えません。そこで「夜回り・朝回り」と呼ばれる取材をします。 銀行幹部らが出勤・帰宅する朝や夜、自宅近くで声をかけて、歩きながらや立ちながら、わずかな時間で「オフレコ取材」をするのです。取材相手からすれば迷惑なのですが、待っていても情報は集まらないので、記者が迷惑承知で足を運んでいる、という構図です。